へんてこ社労士のときどきブログ

さかべ社会保険労務士事務所オフィシャルブログ

「業務による精神障害」の基準

前回のブログから少し時間が経ってしまいました。


お天気は不安定ですが、暑い日もありますね。


連休は過ぎ去り、仕事に没頭している方もいらっしゃる頃でしょうか。


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今回は精神障害の労災について書きます。


さて、近年、仕事によるストレスが関係した労災申請が増えています。


平成26年度「過労死等の労災補償状況(平成27年6月25日公表)」によると、


精神障害の労災請求件数は 1,456件で、前年度に比べて47件増加し過去最多でした。

労災補償の支給決定件数も、497件(うち未遂を含む自殺99件)で、前年度より61件増えて過去最多でした。


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以前は、発病した精神障害業務上のものと認められるかどうかの判断が難しく、時間がかかることがあり、


その認定を迅速に行うことが求められていました。


そこで、より早く判断ができ、また分かりやすい基準として、


厚生労働省から「基発1226号第1号(平成23年12月26日)」という通達が出されました。


この通達には労働災害精神障害を認定する基準」が示されています。


内容がやや難しくて、できるだけ平易に表現したいので、その内容について要点を絞って書いてみます。


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「業務上の精神障害の疾病」に認定されるためには、以下の「3つの要件」すべてを満たす必要があります。


1)対象疾病を発病していること


「対象疾病」というのは、国際疾病分類(ICD-10)の「精神障害で分類される疾病で、業務に関係がないものは除かれます。(例えばアルコールや薬物による障害等)


よく知られているのは、うつ病(気分「感情」障害)急性ストレス反応(ストレス関連障害、身体表現性障害等)などです。


主治医の意見書や診断書関係者からの聴取等により、「発病の有無」「発病時期」「疾患名」が医学的に判断されます。


事情があって治療歴が無い場合は、聴取内容等から診断基準を満たすかどうか医学的に推定します。 


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2)対象疾病の発病前おおむね6カ月の間に、業務による強い心理学的負荷が認められること


発病の引き金になった、業務による「出来事」と「出来事後」を総合評価して、心理的負荷が「強」と判断される場合は、この要件を満たします。


この通達には「業務による心理的負荷表」があり、心理的負荷が「弱」「中」「強」の具体例が数多く挙げられています。


例えば、「長時間労働」では、以下の出来事があった場合、心理的負荷が「強」になります。


>発病直前の1カ月におおむね160時間以上の時間外労働を行った


>発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った


>発病直前の2カ月間連続して、1カ月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った


>発病直前の3カ月間連続して、1カ月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った


>転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の時間外労働を行った


これらの事例は目安で、この時間外労働時間に至らない場合でも、心理的負荷が「強」と判断されることがあります。


その他にもたくさんの「具体的出来事」が挙げられていますが、


例えば、「強」の事例として、


>部下に対する上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行われた


>胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって、継続して行われた場合


退職の意思のないことを表明しているにもかかわらず、執拗に退職を求められた。


などが挙げられています。


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第3の要件は、


3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと


「業務以外の心理的負荷」の場合、


例えば「離婚」「身内の死亡」「天災」「多額の個人財産の損失」など、業務に関係が無いことによる心理的負荷などが原因の発病ではないことが判断されます。


また、「個体側要因」では、「精神障害の既往歴」「アルコール依存状況」「社会適応状況」などが慎重に判断されます。


そして、精神障害を発病した労働者が、その出来事を主観的にどう受け止めたかではなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価されます。


おそらく、多くの皆さまが、多かれ少なかれストレスを抱えて仕事をしていると思います。


少しでも労働環境を整備し、誰もが気持ちよく成果を上げていくことが大切だと思いますが、


もし「業務上、耐えられない心理的負荷がある」と感じている方がいたら、この基準を確認したら如何でしょうか。


様々な具体例がありますので、自分の業務状態がどの事例に近いのかを照らし合わせて心理的負荷が「強」かどうかを判断するうえで参考になると思います。


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非正規労働者と労災

ゴールデンウィーク真っ只中ですね。


ご家族とともに気分をリフレッシュされている方も多いと思います。


一方で、被災地では追い打ちのように余震があり、不安が続いているようです。


現地の方や支援されている皆様、大変だと思いますが頑張ってください。


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本日は「労働災害」について、少し書いてみます。


平成28年3月15日に発表された、労働基準局安全衛生部安全課の「平成27年における労働災害発生状況について(1月~12月末、平成28年3月速報)」 によると


死傷者数114,292人 (前年同期比 △2,941人、2.5%減少) 死亡者数932人 ( 同 △83人、8.2%減少) 重大災害266件 ( 同 △25件、8.6%減少)


一昨年、平成26年は何れも前年より増加でしたが、平成27年は減少傾向で改善しています。良いことだと思います。


でも、労災の死傷者数は11万人以上もおり、まだまだ減らす必要があると思います。


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ところで、使用者は、労働者(アルバイト、パート等含む)を1人でも使用していれば、原則として、法律上当然に「労働者災害補償保険労災保険)」に加入することになっています。


ところが、アルバイト等に対する「安全の配慮」や「安全教育」については、


正社員に比べて、ついおろそかになってしまうことはないでしょうか?


しかし、使用者に求められる安全配慮義務は、雇用形態(正社員、アルバイト等)によって異なるものではありません


例えば、アルバイトの労災に対する使用者責任をめぐる事例(東京地判平17.11.30判時1929・69)があります。


ある解体業の会社で、アルバイトAさんが廃材を投げ下そうとした際に、転落して、Aさんは脊髄損傷等の傷害を負ってしまいました。そのとき、Aさんは安全帯をせず、ヘルメットも被っていませんでした。


使用者Bさんは、転落防止のための措置を講じておらず、安全帯やヘルメットの着用等についても、具体的に注意を促すこともしなかったために、重大な過失があったとされました。


結果として、アルバイトAさんは労災保険障害等級1級という重い障害が残り、使用者Bさんには合計約8,300万円もの損害賠償が命じられました。


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このように、使用者は、雇用形態(正社員、アルバイト等)にかかわらず、労働者の生命および身体を危険から保護するよう配慮すべき義務安全配慮義務)を負うのは当然のこととされています。


会社の直接雇用ではない派遣社員等」の場合でも、安全配慮義務」を認めた判例 があります。


たとえ直接の雇用関係にはなくとも、「事実上これに類似する使用従属の関係」が認められ、「会社の設備等を利用」して、その「指揮命令下で作業」を行っているという実態がある場合、


直接の雇用関係がない労働者に対する、会社の「安全配慮義務を認めています。


また、派遣労働者の労働安全衛生については、平成21年3月に厚生労働省が通達(陛1.3.31基発0331010)を出して、派遣元事業者と派遣先事業者が各自、または両者連携して実施すべき事項について取りまとめています。


仕事によるケガや病気に対しては、正社員も非正規社員も関係なく使用者は労働者の安全に配慮し、労災保険も適切に使用する必要があります。


仕事でのケガや病気については「労災保険で対応することになっており、「健康保険」を使うことはできません。これを行うと、いわゆる「労災かくし」という犯罪行為になってしまいます。


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労災保険であれば「健康保険」のように治療費3割負担でなく、治療費全額が支払われます


ですから治療は無料です。これを「療養の給付」といいます。


ケガ等で働けず、会社から給料が出ない場合でも、働けなくなって休んでいる4日目から「休業(補償)給付」として、1日の賃金の6割相当の金額が支給されます。また、「特別支給金」として2割相当が支給されますので、合計8割程度の金額が支給されます。


障害が残ってしまった場合には「障害(保障)給付」として、その障害の程度によって一定の金額が支給されます。


例えば障害が重い場合1日の賃金の313日分~131日分相当の金額が毎年支給され、


障害が軽い場合でも、1日の賃金の503日分~56日分相当の一時金が支給されます。


万が一、亡くなってしまったときは「遺族(保障)給付」として、家計を共にしていた残された家族(遺族)の人数によって一定の金額「遺族(保障)年金」が支給されます。


例を挙げると、4人以上の遺族の場合は1日の賃金の245日分相当の金額が、毎年支給されます。


ところで、労災は事故によるケガや病気に限りません。


過重労働、長時間労働、仕事や人間関係の大きなストレス等により、心の病になってしまう労災が増えています。


非正規労働者が4割にもなり、主要業務を任さるようになると、非正規労働者でもあり得ることだと思います。


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人を雇用している方は、常に働いている方の安全に配慮することが大切ですし、


また、万が一の労災があった場合、一定額の損害賠償の負担能力を持って、被災労働者を救済するために、


(たとえ非正規労働者のみだったとしても)労災保険への加入を忘れないようお願いします。


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「特定社労士」をご存知ですか?

熊本県大分県などではまだ地震が続いて、復興を阻んでいます。


新聞によると「中小企業」は、大手企業のように本社からの支援が見込めず、


「孤立無援」のなか、復興が遅れて苦労されているとのこと。


熊本県などの地方経済を大きく支えている中小企業の復興は、地元の暮らしの復旧にも大きく影響すると思います。


1日も早い復興を心から願います。


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では、今日の話題に入ります。


「個々の労働者」と事業の間の労働に関する紛争を「個別労働関係紛争」といいます。


「個別労働関係紛争」が問題になってきたのは、


パートや派遣労働者のように労働組合に頼れず、個人での紛争解決を迫られる労働者が増え、


その内容もいじめ、嫌がらせ、セクハラ、パワハラ、個別の退職勧奨、育児や介護等の


個々の労働者に係わるトラブルが増えたことが背景あります。


一方、以前は、職場の個別のトラブルは裁判で解決することが多かったのですが、


裁判には多くの時間と費用を要し、原則公開で行われます。


また、裁判での決着では、当事者間で「勝った」「負けた」の関係になり、円満な職場関係の解決を難しくして本当の解決に結びつかないこともあります。


ですから、裁判になる前、あるいは裁判によらない解決手段として裁判外紛争解決手続(ADR)」が活用されるようになってきました。


ADRは、裁判に比べ「簡易、迅速、低廉」にトラブルを解決するための手続きです。申立ての手続きが簡単で、非公開であることも大きな特徴です。


労働者にとっては、時間的にも、金銭的にも、肉体的にも、精神的にも負担が軽くなるばかりでなく、


経営者にとっても、裁判になった場合の企業イメージの低下や企業リスクを回避することができます。


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特定社会保険労務士は、依頼者(事業主もしくは労働者)に代わって(代理人または補佐人として)ADRの手続きを行い、


当事者からそれぞれの意見を伺ったうえで、双方が納得できる和解案を示すことでトラブルを解決する


「紛争解決手続代理業務」ができます。


特定社会保険労務士対象となる業務は、


「個別労働関係紛争解決促進法」に基づき都道府県が行うあっせんの手続の代理


男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」および「パートタイム労働法に基づき都道府県労働局が行う調停の手続の代理


個別労働関係紛争について都道府県労働委員会が行うあっせんの手続の代理


個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続の代理(ただし紛争価額が120万円を超える事件は弁護士の共同受任が必要)


事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭と陳実


そして、主な仕事としては、


「個別労働関係紛争」に関する依頼者からの相談と助言


紛争の原因等の把握、事実確認依頼者の立場に立った主張法的な見通し


あっせん申請等の作成と提出


紛争解決機関への内容説明


>相手方との和解交渉


あっせん等期日における意見陳実、和解の締結等


などを行うことができます。


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特定社会保険労務士は、社会保険労務士厚生労働大臣が定めるADRに関する研修を終了し、


「紛争解決手続代理業務試験」という国家試験に合格し、社会保険労務士会連合会が備える社会保険労務士名簿に付記した者が、その業務を行うことができます。


特定社会保険労務士平成19年4月1日の「社会保険労務士法」改正時にできた資格であり、労働問題の解決や未然防止等により、社会への貢献することを求められている新たな業務領域だと思います。


私も「特定社会保険労務士」として付記されています。


特定社会保険労務士倫理規定準則(平成19年4月1日施行)」の第一条では、


 「特定社会保険労務士は、紛争解決手続代理業務に係る職務の重要性専門家としての責任を自覚し、依頼者のために誠実にその職務を行わなければならない」


職務の自覚について規程しています。


「品位」「公正」「誠実」は、社会保険労務士として変わりませんが、


この規定では「依頼者のために」とあり、また、第5条にも「依頼者の意思の尊重」について規程しています。


当然のことかもしれませんが、依頼者(事業主や労働者等)により、業務の立ち位置を常に考慮することが強調されているように思われます。


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また、あっせん等の場で依頼者のための主張を行うときには「法的三段論法」に基づいて行うことが求められますし、権利義務の存否が判断されます。


「法的三段論法」とは、


1)大前提・・・法規、判例


2)小前提・・・具体的事実


3)結論・・・・法適用の結果


つまり「法的三段論法」とは、法規等と具体的事実から法の適用に関する結果を導き出す推論方法です。


例えば、


1)大前提:人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する(刑法199条)


2)小前提:AはBを殺した(事実)


3)結論: Aは、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処せられる


というような論理的な手法です。


当たり前のようですが、このような思考を積み上げていくことは大変なことだと思います。


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いずれにしても、社会保険労務士として、職場でのトラブルが起こらないように事業主等を支援していくことが最も大切だと思います。


そして、万が一、トラブルになったときは、特定社会保険労務士として裁判にまでならないようにトラブル解決のための「あっせん」や「調停」をお手伝いしたいと思います。


そのためにも、これからも地道に勉強していきたいと思います。


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中小企業の経営理念?!

熊本から大分を中心とする九州地方の大地震で、多くの方が不安な気持ちでお過ごしになっていることと思います。


被害の映像を見ると、心が痛みます。次々に起こる地震が早く治まって欲しいと願います。


そして、亡くなった方、被害に遭われた多くの皆様に対しては、心からご冥福とお見舞いを申し上げます。


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今日のテーマに入ります。


平成25年の厚生労働白書の、若者の意識調査を見ると、


新入社員の働く目的は、「楽しい生活をしたい」とする者の割合が、平成12年以降、約25%から38%まで大きく上昇している一方、


「社会のために役立ちたい」とする若者も、平成12年以降約5%から約15%に上昇傾向であり、


「仕事を通じ社会に貢献していきたい」と考える若者の増加として注目されています。


それから、会社を選択する理由は「自分の能力・個性が生かせるから」とする者が約35%で、最も高い割合を占めています。


つまり、最近の新入社員は「楽しく」生活ができ、「社会に役立ち」「自分の能力・個性を生かせる」仕事につけるかどうかを重視する傾向が強まっているようです。


ですから、中小企業は大企業に比べると採用活動で思うような人財を確保することが難しい状況が続いていますが、


従業員を家族のように大切にし、地域社会に貢献するやりがいのある職場である」といった企業の魅力を出し、アピールしていくことは、中小企業にとっては大切なことかもしれません。


つまりそれは、中小企業の「経営理念」に当たるものだと思います。


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ところで、採用で良い人財を確保したら、その「人財力」をさらに高めていくことが大切で、企業の競争力の強化に繋がっていきます。


「人財力」を高めるためには、採用、人財育成、そして能力を発揮させるための「人財育成方針」を策定することが大切です。


そして、「人財育成方針」を策定するためには、しっかりとした「経営理念」が必要だと言われます。


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では、「経営理念」とは、どんなものでしょうか?


様々な考え方や定義がありますが、一例を挙げると、


経営者の視点から見た場合、創業者、歴代の経営者および現社長の経営哲学、価値観、信条等の経営判断の拠り所であり、経営者個人の人生観が反映され、経営手法や製品そのものに影響するものです。


従業員の視点から見ると、行動姿勢、行動指針に繋がるもののことです。従業員として、いかに行動すべきか価値判断をどうすべきかの基準になるため、「経営理念」の浸透と本質的な理解が必要です。


社会的な視点では、「経営理念」は社会への価値提供(存在価値)です。何をもって社会に貢献するのか、そのために単にモノを提供するのではなく、伝えたい思いや文化や価値を示す意思表示のことです。


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では、なぜ「経営理念」が企業にとって必要なのでしょうか?


会社の従業員が少人数のときは、社長の個人的な魅力と指導力と目配りで、会社の価値判断や行動の基準などの同一性が保たれると思います。


しかし、20人から30人を超えてくると、社長ひとりでは目が届かなくなってきます


そのとき「経営理念」が社内に浸透していれば、従業員が業務遂行上ある意思決定を迫られたとき、無意識のうちに自社の「経営理念」に照らして判断できます。


その結果、経営者や管理者の指示・命令が無くても、各自が正しい意思決定ができるとともに「その会社らしさ」を醸成することができるようになります。


社外的には、「経営理念」があると会社のイメージが明確になり、取引先・顧客・提携先との信頼関係が築きやすくなります。考え方の明確な会社は信頼されやすく、外部との関係を強化することも可能だといわれています。


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ここで「経営理念」のイメージが浮かびやすいように、参考として、日本を代表する企業のひとつであるトヨタ自動車株式会社」の「経営理念」を調べてみました。


トヨタ基本理念」

1)内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす


2)各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する


3)クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む


4)様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する


5)労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる


6)グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす


7)開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄をめざす


この「基本理念」のもと「トヨタ行動指針」や「トヨタグローバルビジョン」がつくられているのではないかと思います。


トヨタ自動車株式会社の経営者や従業員は、これを経営判断の拠り所とし、社員の行動の基準とし、社会貢献の意思表示としているのだと思います。


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もしかすると、「小さな会社ではこんなかっこいいもの必要ない」とおっしゃる社長もいらっしゃると思います。


でも、形にはしていなくても、創業以来受け継がれたもの


あるいは一代で築き上げた社長であれば、経営に対する考え行動の仕方お客様と接する態度はきっとあると思います。


それを文章にして、後継者や若い人達に伝えていけばいいのではないかと思います。


そうすれば、


「会社がその事業を通じて実現したいことは何か」が明確になり、


従業員の行動や考え方の判断基準になり、


従業員が「何のために働くのか」が明らかになり、


会社の方向性が定まり、


自社がどういう会社なのかを取引先、顧客等にアピールすることができるようになるのではないかと思います。


きっと意欲的な若者が入社して、社長の「経営理念」を踏襲して会社を成長させてくれるかもしれませんね。


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これから働き始める人へ

昨日車で出かけたら、いつも以上にパトカーや白バイを見かけました。


春の全国交通安全運動が4月10日から16日だそうです。


気を引き締めて安全運転しないと。


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では、今日の話題です。


社会に出て働き始めた人は、意欲をもって前向きに仕事に取り組んでいる方が多いと思います。


でも・・・就職後3年以内に会社を辞めてしまう割合は、中学卒業者で7割、高校卒業者で5割、大学卒業者で3割、


いわゆる753現象があると一般的に言われています。


辞めてしまう原因はいろいろとあるのでしょうが、「働くときのルールや制度を十分に理解していない」ことも理由のひとつだと思います。


今日の話題は「働くルール」という基礎的な内容にします。


ベテランの皆さまにとっては「当たり前のこと」ばかりだと思いますが、我慢してお付き合いください。


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会社で働くときは、会社と労働者「働くこと」について「契約」を結ぶことから始まります。


労働者は「働く」こと、会社は働いたことに対して「賃金を支払う」という「労働契約」です。


会社が労働者を採用するときは、賃金、労働時間、場所や業務内容などの労働条件を伝えることが義務づけられています。


この伝える文書のことを「労働条件通知書」といいます。会社によって呼び方や書き方が異なることはありますが、労働条件が記載されている文書です。


ここに書かれている労働条件について、しっかりチェックしてください。


会社と労働者が「労働契約」を結べば、どんな労働条件でもよいという訳ではありません。


例えば「24時間休憩無しで働く」などの条件は、いけないことは明らかだと思います。


「労働契約」の内容については「就業規則」などのルールを守らければいけませんし、


就業規則」をつくるときは「労働基準法」「労働契約法」などの法律を守らなければいけません。


つまり、「労働契約」に書かれている労働条件は、


労働基準法」や「労働契約法」など各種の労働関係の法律によって、一定の規制を受けていることになります。


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ところで、労働関連の法律の中心である労働基準法とは、どんな法律でしょうか?


会社と労働者が共に守らなくてはならない法律として、労働者が劣悪な労働条件で働くことがないように労働者を保護することを目的としています。


この法律で定められているルールは最低基準なので、就業規則や労働契約などは、それ以上の条件にしなければいけません。


また「労働契約法」というのは、


会社と労働者の間で労働条件に関するトラブルが増加してきたことを受けて、平成20年にできた法律で、


労働条件のトラブルを未然に防止するために、「労働基準法」より詳しく労働契約のルールが定められています。


会社で決めている就業規則とは、


10人以上の労働者を雇っている場合に作成する義務があり、個々の会社が定めている働くときのルールです。


労働時間や賃金などだけでなく、セクハラ、パワハラなどの服務規律なども決められていることがあります。


仕事をするときは、会社も労働者も、法律、就業規則、および労働契約をしっかり守らなければいけないことになっています。


そして、「働くルール」が守られることよって職場環境は良くなり、業績にも好影響があると思います。


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一方、俗にブラック企業と呼ばれている会社は、このような守るべき「働くルール」が機能していない会社です。


このような会社は、社員の定着率が低いことが多いので、慢性的に人手不足の状態の場合が多いと思います。


ですから、頻繁に求人し、求人広告には良いことしか書かれていない場合があります。


もし就職して何かおかしいと思ったら、できるだけ早めに周囲の人や専門家に相談したほうがよいと思います。


「働くルール」の主なチェックポイントを挙げると、


1)労働時間


労働基準法では、「法定労働時間」は1日に8時間、1週間に40時間を超えて働かせてはならないと定められています。


この時間を超えて働かせる場合には、「36協定」という労使協定を結び、「割増賃金」を支払う必要があります。


そして「割増賃金」を通常の賃金の何割増にするかの最低基準(25%など)も法律で定められています。


もし労働時間がしっかり管理されていなかったり、「割増賃金」が支払われていない場合は注意が必要です。


2)休憩

労働基準法では、労働時間が1日6時間を超えるときは45分以上1日8時間を超えるときには60分以上の休憩を与えなければいけないことになています。


3)休日


休日は1週間に1日、または4週間に4日与えなくてはならないことになっています。


これを「法定休日」といい、「法定休日」働いたときには「割増賃金」が発生します。


4)労働保険、社会保険

労災保険は、1人でも労働者(パート、アルバイトでも)がいれば加入義務があります。


雇用保険も1人以上労働者(日雇い、短期雇用でも)がいれば加入する必要があります。


働いている事業所が「法人」だったり、雇用されている人が5人以上であれば、原則として「健康保険」や「厚生年金保険」に加入する必要があります。


加入条件の詳細については、事業所の条件や労働者の労働時間・日数によって多少異なりますが、法律をチェックしてみてください。


5)セクハラ、パワハラ


守るべきルールが明確になっていない場合は、要注意だと思います。


他にもチェックすべきポイントはありますが、主なものだけに絞ってみました。


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でも、チェックすることばかりに過敏になりすぎると、上司や先輩方とギクシャクしたり、肝心の仕事に手がつかなくなったりしてしまいます。


大切なことは、働き始めた皆さんがいきいきと前向きに働くことができる職場かどうかだと思います。


働きやすいと感じる職場だったら、「働くルール」がしっかり機能していると思います。


ですから、ときには困難なことや苦しいこともあり仕事が大変なこともあると思いますが、


まず、仕事をしっかり覚えて一生懸命に真剣に取り組んでみてください。


そして、もし仕事や職場での苦しみや悩みが理不尽に重いときは、遠慮せずに周囲の人や専門家にご相談してください。


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経営者も人財不足ですか?!

今、新入社員や人事異動で、慌ただしい職場も多いと思います。


4月になると、「お花見」どころではないのかなあ。


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さて本題に入ります。


人口減少や産業構造の問題などから、多くの分野で労働力の確保が難しくなっています。


しかし、不足しているのは労働者に限ったことではないようです。


中小企業の経営者も・・・


少し前に、ある中小企業診断士の方から、


税理士等とご一緒に「中小企業の事業継承問題」について取り組んでいるお話を伺いました。


「中小企業の事業継承問題」というのは、簡単に言うと「中小企業の経営者の後継者が見つからない」ということです。


少子高齢化が急速に進むなか、中小企業の経営者の平均年齢は年々上昇し、60歳を超える経営者が全体の51.8%になっています。(帝国データバンク「全国社長分析」2012年)


そして、中小企業の経営者が引退する年齢は現在70歳前後になっています。(中小企業庁委託「中小企業の事業継承に関するアンケート調査」2012年11月)


つまり、あと数年で中小企業の約半分の経営者の年齢が70歳になり、「事業継承問題」に直面することが予想されているのです。


しかし、実際は中小企業の約半分弱しか後継者を決めていない可能性があります(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「事業継承アンケート調査2005年12月)


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中小企業の場合、一般に会社の所有と経営が十分に分離されておらず経営者に株式の過半が集中していることが多く、


「親族への世襲」で事業の継承されることが多いと思います。


しかし、少子化で子供がいなかったり、子供が事業を継ぐ意思がなかったり、十分な経営能力がある親族がいなかったりして、「親族への世襲」が困難な場合が増えています。


そのような事情から、「親族以外」の役員や従業員、また社外の第三者へ継承する事業引継ぎに関心が高まっています。


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でも、それはそんなに簡単ではないようです。例えば・・・


先代の株式を持つオーナー社長が、優秀な役職員を選んで「代表取締役社長」を譲っただけでは、株式を持たず議決権の無い「雇われサラリーマン社長」になってしまいます。


ですから、先代社長は「自身の持株も一緒に譲る」必要が出てきますが、通常の場合、役職員は自社を買収できるほどの資金は持っておらず、また金融機関から買収資金を調達できるあてもありません


そして先代社長が亡くなり、会社の株が何人かの親族に分割相続されてしまうと、相続人達はその会社に何らの思い入れや愛着もなく意見が一致しない可能性もあり、経営が破たんすることもあります。


また、先代オーナー社長が金融機関から「個人保証の借入金」をしていた場合、後継者にも「個人保証」を要請します。しかし、負担が重く受けられず、金融機関との関係を維持することが難しくなることもあります。


そして、こうした経緯を見ていた他の社員が次期経営者を目指さなくなることも考えられます。


また、中小企業の場合「計画的に後継者を育成する」ことも難しいと思われます。


しかしながら、中小企業の9割以上の経営者は、自分の後も事業を他者に引き継ぎたいと考えています。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「事業継承」アンケート調査」2005年12月)


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近年、日本の企業の大多数を占めている中小企業は減少傾向であり、


地域経済を疲弊させてしまうだけでなく、


日本経済の土台になる高い技術力や高い商品サービスを失っていく可能性があります。


これらを円滑に次世代に引き継いでいくことは、重要なことだと思います。


平成27年度には、全国47都道府県で、経済産業省所管の独立行政法人中小企業基盤整備機構が、事業引継ぎ支援センター」を開設しました。


また、事業継承税制(相続税・贈与税)の緩和


事業継承融資制度により親族以外の後継者への自社株式の引継ぎに向けた対応、


さらに個人保証への対応についても国が検討しています。


また、税理士、公認会計士、金融機関や様々なコンサルタント等も親身に相談に対応しているそうです。


日本の大切な財産である多くの優良な中小企業は、是非、将来に渡って元気で経営を続けていって欲しいと思います。


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女性の賃金は過去最高ですが・・・

お花見の季節。


お天気が不安定で、朝夕は冷えますね。


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さて、ここから今日の話題です。


「賃金構造統計基本統計調査」という国の調査をご存知ですか?


これは、厚生労働省が統計法に基づいて、現金給与、超過労働給与、賞与等毎年7月に調査するものです。


平成27年度の調査結果が、2月18日に公表されましたので、その内容をごく簡単にご紹介します。


1)一般労働者の賃金の推移


男性の平均賃金は33万5,100円で前年より、1.7%増加しました。


そして、女性は24万2,000円で1.7%増加し、


過去最高の賃金になっています。


如何ですか?本当に実感がありますか?


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2)性別による一般労働者の賃金


男性も女性も50歳から54歳が賃金のピークになりますが、そのときの男女の賃金の格差は16万3,300円もあります。


この調査によると入社時には男女の賃金はほとんど差がありませんが、その後、女性の賃金の上昇が少ないことが分かります。


男女格差は小さくなったとは言われていますが、調査結果には歴然とした差がみられます。


3)学歴別にみた一般労働者の賃金


男性では、大学・大学院卒の賃金のピーク(50~54歳)が54万4,000円で、
高校卒34万8,300円で、その差は19万5,700円です。


一方、女性は、大学・大学院卒の賃金ピーク時(65~69歳)で42万7,100円で、
高校卒のピークが22万5,000円で、その差は20万2,100円になっています。


男女いずれも、入社後大学・大学院卒の賃金は急カーブで上がりますが、


高校卒は入社後あまり上昇しないようです。


4)企業規模別にみた一般労働者の賃金


大企業、中企業および小企業の賃金とも、男女とも前年を上回っています。


しかし、男性の賃金は、ピーク時で大企業が51万4,800円、中企業が40万6,700円、小企業は33万2,500円で企業の大きさによる格差は明確にあります。


一方、女性のピーク時の賃金は、大企業が30万7,300円、中企業が26万8,900円、小企業は23万2,900円で、


企業の規模による差はありますが、男性の賃金に比べるとその差は小さくなっています。


これは、企業の規模に関わらず


女性の賃金が、入社以降はあまり上昇しないことが理由だと思われます。


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5)雇用形態別の賃金


男女計の正社員の賃金は32万1,100円で、正社員以外では20万5,100円となっており、
正社員と正社員以外の労働者の間に大きな格差があることがわかります。


年齢階級別にみると、正社員の場合は入社後、年齢とともに安定して賃金は上昇しますが、


正社員以外の労働者は、男女とも、年齢が高くなっても賃金の上昇はあまりみられないことがわかります。


6)産業別にみた賃金


金融業、保険業、教育、学習支援業の賃金が男女とも高く


一方、宿泊業、飲食サービス業の賃金は低い傾向にあります。


厳しい業界はいつも変わりません。


7)短時間労働者の賃金


短時間労働者の賃金は、男性が1,133円/時間(前年比1.2%増)、女性が1,032円/時間(前年比2.0%増)と、いずれも過去最高になっています。


しかし、年齢階級別でみると30歳以降はあまり賃金単価が上昇しないことがわかります。


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如何でしょうか?


労働者全体の賃金は「前年より上昇」し、


女性や短時間労働者は「過去最高の賃金」になったという調査結果になっていますが、実感はあるでしょうか?


一方、男女、学歴、産業別、正規/非正規による格差は、年齢を重ねるにつれてより大きくなっていくことも調査結果から分かります。


大企業に勤める大卒の男性正規社員は、年齢が上がるにつれて賃金は安定して大きく上昇する傾向ですが、


それ以外の労働者は、年齢とともに賃金が安定して上昇する傾向は少ないようです。


多くの労働者が、将来の人生設計(結婚、出産、住居、育児、教育、介護など)を描くことが難しい原因がここにもあるように思いますが、如何でしょうか?


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