飲み会後でも労災!?
オリンピックが始まりました。
ちょっと前まで、他人事のような気持ちだったのに、
開幕式を見たら、急に気分が盛り上がってきました。
日本の選手には是非頑張って欲しいですね。
今回は最近あった労災の判決について書こうと思います。
仕事が終わって、会社の上司、同僚や後輩と居酒屋で一杯・・・ということはありませんか?
おそらく多くの飲み会では、仕事や職場などの話題はあっても、仕事そのものをすることはあまり無く、
人間関係を深めたり、ストレス解消する場になっているのではないでしょうか?
でも、時には仕事に関係の深い会合やパーティーなどに参加することもあるかもしれませんよね。
少し前のことになりますが、平成28年7月8日の新聞やインターネット等で、
「歓送迎会後の事故、労災と認める最高裁判決」という趣旨の報道がありました。
概要は、
職場の中国人研修生との歓送迎会に参加した社員が、研修生等をアパートまで車で送り(飲酒していない)、残業のために会社に戻る途中、交通事故で亡くなってしまいました。
社員の妻が遺族補償給付(労災保険)と葬祭料の支給請求のため、労災認定を求めて訴訟を起こしましたが、
一審と二審では「会社の従業員有志によって行われた私的な会合」において「任意に行った運転行為」であり、会社の支配下にある状態でされたものとは認められず、業務上のの事由によるものとはいえないとされ、妻の請求は退けられました。
しかし、最高裁では
歓送迎会の参加は有志とされていたものの、上司の企画と呼びかけで開かれ、会社から経費が支払われ「事業活動に密接に関連するもの」であり、また、ほぼ社員全員が参加しており「出ないわけにはいかない状況」にあり、
一方、社員の業務の納期が翌日であり、歓送迎会後に上司が手伝うと言われたが「業務の納期は延長されず、歓送迎会後に再度、職場に戻ることを余儀なく」され、
歓送迎会後、直接的な命令の明示は無かったものの、「上司に代わって社有車で研修生等を送った」といえるので、会社の支配下にあったというべきものとして、
労災(業務災害)であることを認めました。
一般的に「業務災害」とされるためには「業務遂行性」と「業務起因性」が認められるかを判断します。
「業務遂行性」とは、「労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあること」であり、
また「業務起因性」とは、「業務と負傷・疾病・死亡(災害)と相当因果関係があること」です。
この事件では、
「業務遂行性」の判断が、最も重要なポイントだったと思います。
つまり「事業主(会社)の支配下にあったかどうか」が判断の違いが判決に影響しています。
実際、この事件の一審、および二審の判決でも、歓送迎会は有志による「私的な会合」であり、「社員が任意に行った運転行為」として「会社の支配下にない」として「業務遂行性が否定」されています。
しかし、最高裁の判決では、この判断が逆転して「業務遂行性」が認められたため、「業務で運転したことで事故で亡くなった」ことになるので、
「業務と死亡には相当因果関係」が存在することになり、当然「業務起因性」も認められました。
一般的に、これまでは職場の懇親会等後に労働者が災害を被ったとしても、ほとんどの事例で「業務遂行性が否定」されていました。
しかし、この判決では、就業後の私的な会合や飲み会のようなときでも、形式にとらわれず、その事実や内容を深く掘り下げて実態を探求し「業務遂行性」の有無を判断しています。
ですから今後は「業務遂行性」がこれまで認められ難かった事案に対しても、個別具体的に検討する方向を示したものとなるかもしれません。
今回の事件では残された遺族の方や代理人の方が最高裁まで頑張られたことは大変だったと思いますし、
遺族の方には遺族補償年金や葬祭料が支給されることになって、本当に良かったと思います。