へんてこ社労士のときどきブログ

さかべ社会保険労務士事務所オフィシャルブログ

「最低賃金」の豆知識

ニュースで「最低賃金(時給)が2002年度以降最大の上げ幅となり780円から798円になることが決まった」と伝えられました。
景気回復を確実にしたい政府の意向が働いていると思われますが、もし景気回復が遅れると企業に負担を強いることになりかねません。

でも都市では人手不足が深刻なので、既に多くの企業では最低賃金よりずっと高い時給になっており、実際に大変になるのは地方の中小企業かもしれないですね。

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ところで今報道されている「最低賃金」はどういうものかご存じですか?
ちょっとだけ豆知識としてお話したいと思います。知っている方には当たり前のことかもしれないですけど。

実は最低賃金法で定められている「最低賃金」は2種類あります。
ひとつは「地域別最低賃金」で、もうひとつは「特定(産業別)最低賃金」です。

報道されているのは「地域別最低賃金」のことです。これは各県ごとに賃金の最低額を保障するために、法律で毎年決めることが義務化されています。
地域の労働者の生計費、賃金、および通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められます。

またワーキングプア(働いても最低限度の生活ができない人)とのバランスをとるために、生活保護の施策との整合性に配慮する必要もあります。

「地域別最低賃金」は地方/中央の最低賃金審査会からの意見を聞いて、最終的には地方労働局長または厚生労働大臣が決定します。

会社がこの「地域別最低賃金」を下回る賃金を支払ってしまった場合、最低賃金との差額を支払うほか、50万円以下の罰金になります。

一方「特定(産業別)最低賃金」は、業界別に最低賃金を任意で決められる仕組みで、地方労働局長または厚生労働大臣に申し出て、その決定を受けて決まります。

また「特定(産業別)最低賃金」は最低基準である「地域別最低賃金」を上回らなくてはなりません。
会社が下回る賃金を払ってしまった場合、最低賃金法の罰則ではなく、労働基準法「賃金の全額払い違反の罰則」が適用されます(ちょっと細かい話になりました)。

いずれにしても最低賃金法労働基準法から派生した法律なので、厳しい法律だと思います。

しかし特例があり、最低賃金を下回る賃金になる労働者もいます。

つまり地方労働局長の許可があれば、一部の障害者の方、試用中の人、職業訓練中の人など(特例対象者といいます)に対しては、定められた計算方法で減額した基準額が適用されることがあるのです。

ここでクイズです。
栃木県(751円)の派遣会社の労働者が、埼玉県(820円)の企業に派遣された場合、
どちらの県の地域別最低賃金が適用されると思いますか?

答えは派遣先の埼玉県(820円)です。