知らないうちにブラック企業に
雨が強く降って、暖かくなって、強い風が吹いて、急に寒くなって・・・変な天気でした。
ところで、大手居酒屋チェーンが、子会社の新入社員の過労死自殺を会社の責任と認め、和解したことがニュースになりました。
女性は入社後1カ月間の時間外労働が114時間(過労死認定ラインは1カ月では100時間)、午後3時頃出社して翌朝3時半頃退社ですが、タクシー帰宅は認められず、始発電車まで店内で時間をつぶしてから帰宅。2か月間で休みは4日間。
その間に、自己啓発という研修でレポート提出や理念集の暗記等も指示されていたとのことです。
希望を抱いて入社し、僅か2カ月後に亡くなってしまいました。
極めてひどい労働環境です。痛ましいことです。
この居酒屋チェーンは、近年「ブラック企業」のひとつとして批判が広がっていました。
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ところで「ブラック企業」という言葉は、一般的には労働者を長時間働かせる企業や、パワーハラスメント等で労働者を精神的に追い込む企業等に対して使われると思います。
企業にとっては、一度ブラック企業などと報道されてしまうと、企業に大きなダメージを受ける可能性があります。
例えば
1)企業イメージの低下
>顧客離れによる売上減少
>新規採用に悪影響
2)従業員の健康状態の悪化
>生産性の低下
>安全配慮義務違反による訴訟リスク
3)社内全体の士気の低下
>離職率の上昇
>労使紛争の増加
また訴訟になった場合には、居酒屋チェーンのように損害賠償が懲罰加算で通常の2倍(1億3400万円)になるだけでなく、他の社員の未払い残業代等の多額な賠償が加わります。さらに、他の労働者からの訴訟が続く可能性があります。
多くの企業では、「従業員を大切にする経営」をしています。
そして労働法令を遵守し、適正な労務管理をしていると思います。
しかし、一部の悪徳企業では、それを意識的に怠っていたり、
また仕事に厳しく真面目な企業でも、従業員に対し「昔はこんなの当たり前だった」とか「根性が足らん」ということで、無意識のうちにブラック化していくこともあり得ます。
ですから厚生労働省(労働基準局)でも、「ブラック企業」に対する監督指導を強化しています。
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具体的には「過重労働解消キャンペーン」という重点監督指導が、平成26年と平成27年の11月に行われました。
この監督指導では、特に
「長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場」
などが対象になりました。
平成26年11月の監督指導では、4,561事業場が対象となり、そのうち3,811事業場(83.6%)で労働基準関係法令で違反がありました。
主な違反内容としては、「違法な時間外労働」が2,304事業場(50.5%)、「賃金不払い残業」が955事業場(20.9%)でした。
それらの事業場に対して、是正・改善に向けた指導が行われたそうです。
平成27年11月の結果についてはこれからですが、おそらく今後も行政側の指導も強化されてくると思います。
多くの企業にとっては当たり前のことだと思いますが、
今後も労働法令を遵守して適正な労働管理を行うことは、重要な経営事項となっていくことと思います。