妊娠・出産・育児をしながら働く女性のための制度
2015年も残り少なくなりました。
もう休暇を取っている方もいるでしょうし、年末年始も関係なく、お忙しく働いている方もいらしゃると思います。
寒いですが、身体に気を付けて元気で頑張ってください。
今日は、前回のブログに続く内容です。
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今回のブログのテーマは、「妊娠・出産・育児をしながら働く女性を支援する制度」にしたいと思います。
ここでは、原則として継続して働いている女性労働に対して、法令で定められている制度について要点を列挙します。(それぞれの詳細については長い文章になるので省きます)
ですから、下記について会社が従業員に対して行うべき制度として、おそらく就業規則には記載されていると思います。
【職場生活での母性保護に関すること】
>時間外労働、休日労働、深夜業の制限、変形労働時間制の制限(労働基準法第66条)
妊娠している女性は、体調が不安定なことから、時間外労働、休日労働、深夜業および変形労働時間について免除を請求できることになっています。
>軽易業務への転換(労働基準法第65条)
妊娠中は、肉体的負担が大きい業務(例えば1日中売り場に立っている等)の場合は、他の軽易な業務への転換するよう会社に請求できます。
>危険有害業務の就業制限(労働基準法第64条)
一定以上の重量物の取り扱いや、生殖毒性等を有する有害物質が一定濃度以上に発散する場所等での業務については、妊娠、出産機能等に有害なので、妊娠の有無や年齢等によらず全ての女性を就労させることは禁止されています。
【産前・産後休業、育児休業に関すること】
>産前・産後休業(労働基準法第65条)
使用者は、6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産する予定の女性が請求したときや、産後8週間を経過しない女性を就業させてはいけないことになっています。
(特に、産後6週間は強制休業です。ただし、それ以降は本人が請求し、医師が支障なしと認めれば働けます)
パートやアルバイト等の女性も産前・産後休業を取得できます。
産前・産後休業中の賃金については労働基準法では会社に義務付けていませんが、健康保険の被保険者であれば出産日以前42日から出産日後56日まで「出産手当金」が支給されることが定められています。
「出産手当金」は標準報酬月額の3分の2に相当する額になりますが、
会社から給与の全部か一部が支払われているときは支給されません。しかし給与で支払われた額が「出産手当金」より少ない場合は、その差額が支給されます。
>産前・産後休業中の社会保険料(健康保険、厚生年金、介護保険)の免除
(平成24年8月公的年金制度の財政基盤および最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律)
会社が全国健康保険組合や健康保険組合に申し出れば、女性従業員だけでなく会社も免除されます。
>解雇制限(労働基準法19条)
産前・産後休業の期間及びその後30日間の解雇は禁止です。
>出産育児一時金(健康保険法101条)
健康保険の被保険者が出産した場合は、一児の出産につき原則42万円が支給されます。(双子なら84万円)
母体保護が目的なので、妊娠85日以上であれば、死産、流産、人口妊娠中絶でも支給され、また父不明の婚外子出産についても支給されます。
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>育児休業(育児・介護休業法第5条~第9条)
従業員が会社に申し出れば、子が1歳になるまで(またパパが育児休業を取得する場合は、子が1歳2カ月になるまでの1年間)の間、育児休業を取ることができます。
もし1歳になっても待機児童で保育所が決まってなかったり、万が一、1歳になる前にママが亡くなってしまった場合などは、申出によって1歳6カ月になるまで育児休業をとることもできます。
育児休業中は、有給かどうかは会社によって異なりますが、雇用保険の一般被保険者で被保険者期間等の要件や一定の手続きを充たせば「育児休業給付金」が給付されます。
「育児休業給付金」は1歳未満の子の育児休業を取得した等の一定要件を満たした場合、原則として休業開始時の賃金月額の67%が支給されることになっており、6カ月経過後は50%になります。
>育児休業中の社会保険料(健康保険、厚生年金、介護保険)の免除(健康保険法159条)
会社が全国健康保険組合や健康保険組合に申し出れば、従業員も会社も免除されます。
育児休業は正社員だけでなく、パートやアルバイト等でも取得できますし、
契約期間が決まっていても、1年以上同じ会社で継続雇用されていて、子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる場合は、育児休業は取得できます。
【産後休業後の復職に関すること】
>時間外労働、休日労働、深夜業の制限、変形労働時間制の制限(労働基準法第64条)
>危険有害業務の就業制限(労働基準法第66条)
産後1年を経過しない女性には、妊娠している女性と同様に、上記労働制限が適用されます。
>育児時間(労働基準法第67条)
生後1年に達しない子を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分間の育児時間を会社に請求することができます。
>母性健康管理措置(男女雇用機会均等法第12条、第13条)
産後1年を経過しない女性は、医師等から指示があったときは、健康診査に必要な時間の確保を、会社に申し出ることができます。
また、指導を受けた場合には、必要な措置を受ける時間も確保することができます。
【子が1歳になった後も利用可能な制度】
>短時間勤務制度(育児・介護休業法第23条)
会社は、一定の条件を満たす3歳未満の子を養育する男女の従業員について、短時間勤務制度(1日原則として6時間)を設けなければならないことになっています。
>所定労働時間の制限(育児・介護休業法第16条)
会社は、一定の条件をを満たす3歳未満の子を養育する男女の従業員から請求があった場合は、所定外労働をさせてはならないことになっています。
>子の看護休暇(育児・介護休業法第16条)
小学校入学前の子を養育する従業員は、会社に申し出ることにより、
年次有給休暇とは別に、子が1人なら1年につき5日まで、子が2人以上なら10日まで、病気やケガをした子の看護、予防接種及び健康診断のために休暇を取得することができます。
ただし、有給か無給かは会社の定めによります。
>時間外労働、深夜業の制限(育児・介護休業法第17条)
小学校入学前の子を養育する一定の従業員から、会社に請求があった場合は、
1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはならないことになっています。また深夜(午後10時から午前5時まで)において労働させてはならないことになっています。
このように、働く女性が、赤ちゃんを産んだり育てたりする負担を軽減させて働きやすい環境をつくるように、いくつもの制度が法律で定められています。
しかし、このような法律や制度をご存知でない方もいらっしゃると思いますので、より良い労働環境に向けてご参考にしていただければと思います。