へんてこ社労士のときどきブログ

さかべ社会保険労務士事務所オフィシャルブログ

非正規労働者と労災

ゴールデンウィーク真っ只中ですね。


ご家族とともに気分をリフレッシュされている方も多いと思います。


一方で、被災地では追い打ちのように余震があり、不安が続いているようです。


現地の方や支援されている皆様、大変だと思いますが頑張ってください。


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本日は「労働災害」について、少し書いてみます。


平成28年3月15日に発表された、労働基準局安全衛生部安全課の「平成27年における労働災害発生状況について(1月~12月末、平成28年3月速報)」 によると


死傷者数114,292人 (前年同期比 △2,941人、2.5%減少) 死亡者数932人 ( 同 △83人、8.2%減少) 重大災害266件 ( 同 △25件、8.6%減少)


一昨年、平成26年は何れも前年より増加でしたが、平成27年は減少傾向で改善しています。良いことだと思います。


でも、労災の死傷者数は11万人以上もおり、まだまだ減らす必要があると思います。


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ところで、使用者は、労働者(アルバイト、パート等含む)を1人でも使用していれば、原則として、法律上当然に「労働者災害補償保険労災保険)」に加入することになっています。


ところが、アルバイト等に対する「安全の配慮」や「安全教育」については、


正社員に比べて、ついおろそかになってしまうことはないでしょうか?


しかし、使用者に求められる安全配慮義務は、雇用形態(正社員、アルバイト等)によって異なるものではありません


例えば、アルバイトの労災に対する使用者責任をめぐる事例(東京地判平17.11.30判時1929・69)があります。


ある解体業の会社で、アルバイトAさんが廃材を投げ下そうとした際に、転落して、Aさんは脊髄損傷等の傷害を負ってしまいました。そのとき、Aさんは安全帯をせず、ヘルメットも被っていませんでした。


使用者Bさんは、転落防止のための措置を講じておらず、安全帯やヘルメットの着用等についても、具体的に注意を促すこともしなかったために、重大な過失があったとされました。


結果として、アルバイトAさんは労災保険障害等級1級という重い障害が残り、使用者Bさんには合計約8,300万円もの損害賠償が命じられました。


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このように、使用者は、雇用形態(正社員、アルバイト等)にかかわらず、労働者の生命および身体を危険から保護するよう配慮すべき義務安全配慮義務)を負うのは当然のこととされています。


会社の直接雇用ではない派遣社員等」の場合でも、安全配慮義務」を認めた判例 があります。


たとえ直接の雇用関係にはなくとも、「事実上これに類似する使用従属の関係」が認められ、「会社の設備等を利用」して、その「指揮命令下で作業」を行っているという実態がある場合、


直接の雇用関係がない労働者に対する、会社の「安全配慮義務を認めています。


また、派遣労働者の労働安全衛生については、平成21年3月に厚生労働省が通達(陛1.3.31基発0331010)を出して、派遣元事業者と派遣先事業者が各自、または両者連携して実施すべき事項について取りまとめています。


仕事によるケガや病気に対しては、正社員も非正規社員も関係なく使用者は労働者の安全に配慮し、労災保険も適切に使用する必要があります。


仕事でのケガや病気については「労災保険で対応することになっており、「健康保険」を使うことはできません。これを行うと、いわゆる「労災かくし」という犯罪行為になってしまいます。


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労災保険であれば「健康保険」のように治療費3割負担でなく、治療費全額が支払われます


ですから治療は無料です。これを「療養の給付」といいます。


ケガ等で働けず、会社から給料が出ない場合でも、働けなくなって休んでいる4日目から「休業(補償)給付」として、1日の賃金の6割相当の金額が支給されます。また、「特別支給金」として2割相当が支給されますので、合計8割程度の金額が支給されます。


障害が残ってしまった場合には「障害(保障)給付」として、その障害の程度によって一定の金額が支給されます。


例えば障害が重い場合1日の賃金の313日分~131日分相当の金額が毎年支給され、


障害が軽い場合でも、1日の賃金の503日分~56日分相当の一時金が支給されます。


万が一、亡くなってしまったときは「遺族(保障)給付」として、家計を共にしていた残された家族(遺族)の人数によって一定の金額「遺族(保障)年金」が支給されます。


例を挙げると、4人以上の遺族の場合は1日の賃金の245日分相当の金額が、毎年支給されます。


ところで、労災は事故によるケガや病気に限りません。


過重労働、長時間労働、仕事や人間関係の大きなストレス等により、心の病になってしまう労災が増えています。


非正規労働者が4割にもなり、主要業務を任さるようになると、非正規労働者でもあり得ることだと思います。


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人を雇用している方は、常に働いている方の安全に配慮することが大切ですし、


また、万が一の労災があった場合、一定額の損害賠償の負担能力を持って、被災労働者を救済するために、


(たとえ非正規労働者のみだったとしても)労災保険への加入を忘れないようお願いします。


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