へんてこ社労士のときどきブログ

さかべ社会保険労務士事務所オフィシャルブログ

たとえ長期治療になっても・・・

今年の春は、桜だけでなくそれ以外の花も早く、しかも一斉に咲いてるような気がします。


寒かった少し前の冬を忘れてしまいそうです。


GW前でも初夏のような日もあり、今から真夏がどのくらい暑くなるのか気になります。


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さて、今回は「治療と職業生活の両立」について書きます。


企業で働いているみなさんは、毎年、健康診断を受けていると思います。


健康診断で、脳・心臓疾患につながるリスクのある血圧や血中脂質で所見のある人は、年々増加していて、平成26年では53%に上るなど、疾病のリスクを抱える労働者は増える傾向にあるようです。


さらに、職場の高齢化の進行もあり、労働者で病気を抱えている人はさらに増加すると見込まれています。


そんな中、難病や長期治療が必要な疾病にかかってしまう労働者も増えているようです。


実際、「1カ月以上連続して休業」している労働者がいる企業の割合は、精神疾患が38%、がんが21%、脳血管疾患が12%(平成25年度厚生労働省委託事業調査)にも上ります。


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一方、かつては「不治の病」とされていた疾病も、近年の診断技術や治療方法の進歩で生存率が向上し、「長く付き合う病気」になってきています。


例えば、がんは、国立がん研究センターの調査で、5年生存率が「平成5年~平成8年」の期間で53.2%だったのが、「平成18年~平成20年」の期間では62.1%に向上しています。


つまり、労働者が病気になったからと言って、すぐに離職しなければならないという状況が必ずしも当てはまらなくなってきているようです。


実際、仕事を持ちながら、がんで通院している労働者の数は32.5万人にも上るというデータもあります。(平成22年国民生活基礎調査


つまり、がんなどの病気を抱えながらも「仕事を続けたい人」は意外に多く、


がん、脳血管疾患、心疾患、筋骨格系疾患、ストレス性疾患にかかっていても95%の人が「就業継続の意向あり」と答えているデータもあります。(平成25年厚生労働省委託 みずほ情報総研調査)


背景には、「家庭の生計を維持するため」「治療代のため」や「働くことが生きがい」など、様々な理由があるようです。


しかし、実際には「働きたい」と望んでいても、職場の理解・支援体制不足により、仕事を辞めてしまう場合がみられます。


例えば「連続1カ月以上の治療が必要」とする社員が出た場合「病気休職を申請せず退職する者がいる」とした企業は、正社員のメンタルヘルス不調の場合は18%、身体疾患の場合は15%というデータもあります。(平成25年独立行政法人労働政策研究・研究機構調査)


また、疾病や障害を抱えながらも、仕事上の都合で適切な治療を受けない場合もあるようです。


例えば糖尿病患者の約8%が「通院を中断」しており、その理由が「仕事が忙しいから」としているデータもあります。(平成25年度厚生労働科学研究)


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しかし、このような状態は、本人や会社ではもちろん、社会にとっても損失になると考えられます。


ご存知のとおり、会社には「労働者の健康確保の責任」がありますし、


人手不足が進行していく時代において、継続的な人材確保や人材の定着は企業の生命線になる可能性があります。


また、労働者の不安感、モチベーションの低下は組織や企業の活性化に悪影響を与えることも考えられます。


ですから厚生労働省では、平成28年2月に「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドラインを参考事例としてまとめ、さらに、3月に「企業・医療機関連携マニュアル」と「難病に関する留意事項」を公表しています。


ガイドラインは法律のような効力はありませんが、国の指針として、守ることが好ましい規範として示されたものです。


その中で示されている事例では、「治療と職業生活の両立支援」は、まず「労働者からの申出」から始まります。その際、主治医等に受診し、自分が疾病にかかっていることを把握し、主治医と相談しながら望ましい働き方について相談します。


主治医に「意見書」を書いてもらい、自分で会社にその「意見書」を提出します。その際、主治医と連携している医療ソーシャルワーカー、看護師や、地域の産業保健総合支援センター、保健師または社会保険労務士等の支援を受けることもできます。


会社では、主治医の「意見書」をもとに、就業の可否、働く上での治療に対する配慮などについて検討し、就業可能な場合は「両立支援プラン」を作成して実行します。その際、産業医または保健師、看護師等の産業保険スタッフ等の協力を受けることもできます。


その際、気を付けることは、両立を実現しやすい職場を環境整備です。
職場の社員の協力は不可欠なので、事業者の基本指針を表明して周知し、教育などを通じて職場風土を醸成する必要があります。


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会社の置かれている経営環境等により、上記の通りの対応は難しいこともあると思いますが、徐々に対応できるように変えていくことが望ましいと思います。


会社が「治療と職業生活の両立」を支援することで、


労働者のメリットは、病気を悪化させることを防止し、収入が得られ、安心感やモチベーションが向上し、生きがいを得ることもできる可能性があります。


一方、会社のメリットとしては、継続的な人材確保と定着、モチベーション向上による生産性の向上、多様な人材を活用することによる組織の活性化などが期待できる可能性があります。


少しご検討してみては如何でしょうか?


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