仕事の効率を上げないと
西日本豪雨の被災地は大変ですね。
猛暑も重なり、被災者の方はつらい日々だと思います。ボランティア、自衛隊等の皆様にも頭が下がります。
日本でも異常気象が、これからは普通気象になってしまうのでしょうか?
今回は労働生産性についてちょっぴり書いてみます。
6月末に働き方改革関連法案が国会で可決されました。
これによって労働基準法や労働契約法など8本の法律が一括改正されます。
この改正のなかで特に注目されているのが「時間外労働の罰則付き上限規制」>、「正規、非正規の同一労働同一賃金」や「高度プロフェッショナル制度」などですが、
その大きな狙いは、これまで「長時間労働に依存」してきた日本の雇用慣行を見直して、「仕事の効率化・労働生産性向上」を促していくことではないでしょうか。
その背景には、高齢化と人口減少が確実な日本において、今後「労働力不足が慢性化」することが予想され、
しかも先進国の中で「日本の労働生産性が非常に低い」こと、
さらに相次いだ「過労死」、「子育てや介護による退職」などの社会問題など、危機的な状況を迎えていることがあると思います。
これまでのように「長時間労働」が重宝され、残業が多いほど高賃金になる現行制度のままでは、この状況を乗り越えることはできないということだと思います。
これからは「仕事の効率化・労働生産性向上」を進めることができること、
つまり「同等以上の品質の仕事を、より短い時間で行うこと」ができる企業や人が評価され、生き残れる時代に変えていこうということだと思います。
もちろん、障害者、高齢者などのへの配慮や、バリバリ働ける世代でも介護や出産や育児などの負担を抱えてる人達に対する配慮もしながら、働きやすい職場を作って「社会全体として労働生産性を上げていく」ことが大切です。
また、不合理な処遇を受けている非正規労働者の労働条件を改善することで、意欲を持って仕事をし、安心して生活ができる環境を整えることも、労働生産性を上げることに役立つと思います。
労働生産を上げた結果として、生み出された時間を、新たな創造、生活の充実、知識の蓄積、家族や社会等とのより良い人間関係の構築などに使うことができるのではないでしょうか。
もちろん、働く人に心の余裕と時間ができれば、働く人の能力や活力も向上し、企業の成長や業績向上にも繋がると考えられます。
さらに、職場の環境を考え、労働生産性の向上に取り組んでいる企業に目を向ける新卒者や求職者が明らかに増えています。人手不足の慢性化が見えている現在、人を採用できる条件を整えることは重要だと思います。
ですから今、中小企業でも生産性向上に取り組んでいるところがあります。
平成30年4月20日に「2018年中小企業白書・小規模企業白書(中小企業庁)」が閣議決定され報道されましたが、
この中に、生産性向上に取り組む中小企業等の113の事例と、生産性向上に向けたヒントが提示されています。
その分析によると、中小企業が労働生産性を上げるために注意すべきポイントがいくつか示されていたのでご紹介します。
1)生産性向上のために、設備投資やIT導入する中小企業はありますが、
その時の注意点は、現状の業務プロセスをそのままにして設備やIT機器を導入するのではなく、
まず「業務プロセスの見直し」を併せて行うことが必要です。
不合理な業務プロセスを合理的に改善してから設備等を導入したほうが生産性向上に結び付くということです。
2)従業員の多能工化・兼任化、つまり従業員の「二刀流」化を行うことも労働生産性を上げる手段になります。
実際、従業員のスキルマップを作成し、全体の業務を標準化を進めることで、生産性を向上させている企業があります。
人材確保が難しくなっている現在、現有する人材を育て、能力を拡張することも大切です。
3)中小企業ではITに精通した人材確保が難しいことがあります。
労働生産性を上げるために不慣れなITを導入するには、専門家の指導は欠かせません。
地元のITメーカーや販売会社など身近な相談相手との関係を構築すると上手くいくことが多いそうです。
4)IT導入は、中小企業が単独で進めるよりも、その効果を高める上で、業務領域や一企業の枠を超えて連携することは役立つそうです。
例えば、業務領域では、財務会計のシステムのみ導入するよりも、人事労務、顧客管理、在庫管理、受発注等を連携したシステムを導入したほうが飛躍的に効率が高まります。
また、得意分野の異なる同業他社複数とクラウド上で共有する共同受注システムを導入することで、効率を上げた事例があります。
5)中小企業では、どうしても設備老朽化等を背景とした「維持・更新投資」が中心になってしまうことが多いようです。
しかし一歩進んで「生産性に繋がる前向きな投資」(例えばロボット等)によって、
人手不足に対応しつつ、生産性を高めた企業の事例があります。
6)中小企業は跡継ぎがないところも増え、今、大きな問題になっています。
ですから、事業継承等を背景とした中小企業のM&A件数は増加基調です。
そんな時、買い手企業にとってはシナジーを発揮し、生産性を高める契機になる可能性があります。
例えば、開発設計が強い会社が量産化が得意な会社を買収した場合、上手く技術を連携させることによって生産性を上げることができる可能性があります。
つまり、これからは会社同士のマッチングも、生産性を上げるうえで重要になります。
7)人手不足の小規模事業者では、経営者に業務が集中してしまいます。
そんな事業者こそ、業務の見直しやIT利用等を進めることで、経営者が行う間接業務の業務負担を軽減し、経営者の業務効率化を進めることができるようです。
他にも色々な事例がありますが、これからは中小企業でも生産性の向上を進めていかなければならないと思います。
各種統計では、大企業は中小企業に比べて、生産性向上に対する意識が高いところが多いのですが、
その中でも生産性の高いと認識している企業では、人材育成や能力開発への意識も高いという調査結果があります。(平成30年5月25日 独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果)
つまり、規模が大きい企業ほど将来を見据え、人材が足りなくなることを見越して、生産性向上や今いる人材の能力をもう一段アップさせることの重要性が分かっていると考えられます。
中小企業では、仕事の効率を上げ、労働生産性を上げることが望ましいことは分かっていても、費用や時間がかかるために二の足を踏んでいる事業主の方も多いと思います。
でも、将来を考えれば、一歩踏み出すことが望ましいと考えられます。
各種、国や地方自治体からの助成金、補助金や融資などを活用することも検討したら如何でしょうか。