へんてこ社労士のときどきブログ

さかべ社会保険労務士事務所オフィシャルブログ

「多様な正社員」の活用

現在、いわゆる正社員と非正規雇用労働者との二極化が当たり前のように進んでいます。


一方、企業では「優秀な人材の確保や定着」も企業の発展のために重みを増しているとともに、労働者一人ひとりの「ワーク・ライフ・バランス」も同時に実現していかなくてはなりません。


そのために、労使双方にとって望ましい多元的な働き方の実現が求められています。


そうした働き方や雇用の在り方の一つとして、職務、勤務地、労働時間を限定した「多様な正社員」の普及を政府で進めています。


平成25年6月14日閣議決定した「日本再興戦略」等に基づき、平成26年7月30日に「雇用管理上の留意事項」を公表しました。

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ここで言う「多様な正社員」とは、


いわゆる正社員に比べ、配置転換や転勤、仕事内容や勤務時間などの範囲が限定されている正社員のことを指し、限定の内容(勤務地、職務、勤務時間)を組み合わせることで、企業の実情に応じたバリエーションが広がります。


例えば


勤務地限定正社員:

転勤エリアが限定されていたり、転居を伴う転勤がなかったり、あるいは転勤がない正社員

  例)全国転勤のない営業職

職務限定正社員:

担当する職務内容や仕事の範囲が他の業務と明確に区別されている正社員

  例)ディーラーなど、特定の職務のスペシャリスト

勤務時間限定正社員:

所定労働時間がフルタイムではない、あるいは残業が免除されている正社員

  例)短時間勤務(1日6時間程度)の事務職

いわゆる正社員:

勤務地、職務、勤務時間がいずれも限定されていない正社員


等が挙げられます。


ところで「多様な正社員」を導入することで得られるメリットは何でしょうか。


企業のメリットとしては、

1)仕事と家庭の事情等により、辞めざる負えない従業員の離職を防止できます。

2)地元に定着した就業を希望する優秀な人材の採用や定着増進につながります。

3)これまで勤務地や勤務時間が限定された正社員を、いわゆる正社員に転換することで、労働力の安定的確保を図り、さまざまな人材活用を促します。

4)勤務地限定正社員として、地元密着型の人材採用により、地域のニーズにあったサービスの提供や地元の顧客確保が可能になります。


労働者のメリットとしては、

1)勤務地や残業時間をコントロールでき、ワーク・ライフ・バランスの実現が促されます。

2)安定した雇用のもとで、自身の能力を発揮することや処遇改善が可能になり、モチベーション高く働くことができます。

3)安定した雇用のもとで、中長期的なキャリア形成やスキルアップが可能になります。

4)育児・介護等の事情により、通常の勤務が困難な者の、就業の継続や能力の発揮が可能になります。


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このようにメリットは数多くあるのですが、実際に導入する場合は、雇用管理上の留意事項があります。

1)労働者に対する限定の内容の明示

  労働者に書面で限定内容を明示することは紛争を未然に防止するために有効です。労働者はキャリア形成の見通しやワーク・ライフ・バランスの実現が図りやすくなります。


2)多様な正社員の転換制度

  非正規雇用労働者から多様な正社員へ、正社員から多様な正社員へ等の転換制度を設けることが望まれます。就業規則等で明確にし、周知することが必要です。また労働者本人の同意を得ることも必要です。


3)いわゆる正社員と多様な正社員との間の均衡処遇

  正社員間双方に不公平感をあたえず、モチベーションを維持するために、賃金の水準、昇進・昇給の上限やスピード等を、労使間で十分に話し合い、定めることが必要です。


4)いわゆる正社員の働き方の見直し

  いわゆる正社員の長時間労働の見直しや転勤や配置の見直しを行い、多様な正社員の働き方を選択しやすくする必要があります。


5)人材育成・キャリア形成

  労働者が職業能力を計画的に習得できるよう、中長期的なキャリア形成に役立つ専門的・実践的な職業能力開発への支援を行うことが重要となります。


6)制度の設計・導入・運用に当たっての労使コミュニケーション

  この制度を遂行するために、労働組合等との十分な協議しコミュニケーションを行うことが重要です。


7)事業所閉鎖や職務廃止等への対応

  事業所閉鎖や職務廃止等に直面した場合は、解雇回避のための措置として配置転換等を可能な範囲で行うことが求められます。



当面、大企業から導入されていくのではないかと思われますが、中小企業においても段階的に進めていくことになると思います。


それぞれの会社に適した「新しい多様な正社員の働き方」を考え始めてもいい時期かもしれません。