奨学金の重い負担
卒業、転出や退職など、お別れの季節ですよね。
でも直ぐに入学、転入や入社などの出会いも始まる季節です。
さて、今日の話題です。
最近、運転中ラジオで国会中継を聞いていたら「奨学金の返還問題」に関する質疑応答がありました。
質疑の背景に「労働者福祉中央協議会」という組織が調査したアンケート結果(2016年2月29日発表)したデータがあったようなので、それについて少し調べてみました。
ちなみに「労働者福祉中央協議会」とは、日本の労働団体、労働者福祉に係わる事業団体、生活協同組合、地方福祉協議会等で構成されている組織です。
「奨学金の返還問題」とは・・・
現在、学生時代に「奨学金」を利用している人は、2人に1人(34歳以下、53.2%)にも及ぶそうです。
利用している人は平均312万円を借入し、月々平均約1万7千円返還しています。500万円以上借入している人も1割ほどいて、月々3万円以上も返還している人がいます。
しかし、このように「奨学金」で借金を抱えているにもかかわらず、現実には、大学等を卒業後、不安定雇用や低賃金労働に就いてしまう人が増加し、返したくても返せない人が増加しているのだそうです。
実際、「奨学金」の負担感を「苦しい」と感じている人は39.0%で、特に非正規労働者では56.0%と過半数を超えています。
「奨学金」の負担感から、進学を諦めたり、希望の就職より当面の借金返済のための仕事に向かったり、結婚、出産・子育てを諦めたり、持家を諦めたりする人もいるようです。
このままでは、親から子への世代間の「貧困の連鎖」が懸念されます。
実際に、当調査で「奨学金」の返還が、人生設計に対してどのように影響しているかの結果があります。
「結婚」に影響しているという人は31.6%で最も高く、次いで「持家取得」が27.1%、「仕事や就職先の選択」が25.2%、「子育て」が23.9%、「出産」が21.0%となっています。
つまり「奨学金」の返還がネックになって、人生設計の大切な計画を、先延ばしにしたり、諦めたりしている若者が少なくないということだと思います。
特に「結婚」については、正規労働者では500万円以上、非正規労働者では200万円以上の「奨学金」の借入があると、「影響してる」と感じている人が過半数を占めています。
ところで「奨学金」は、これを利用することで学業を続けることができるという大きなメリットがあるわけですが、
日本の「奨学金」特有のリスクもあります。例えば・・・
>貸与型(返還義務あり)しかないこと(海外では返還義務のない給付型がある)
>有利子の貸与が多いこと
>3カ月以上の延滞はブラックリストに載ること
>自宅への電話等の督促が行われること
>延滞は年5%の延滞金が賦課されること
>教員の返済免除制度は廃止されたこと
などが注意点として挙げられますが、
「奨学金」を借入した人で、これらを知っていたのは、
「貸与型しかないこと」39.5%、「有利子の貸与が多いこと」44.6%、「3カ月以上の延滞はブラックリストに載ること」
23.5%、「自宅への電話等の督促が行われること」27.5%、「延滞は年5%の延滞金が賦課されること」22.3%、「教員の返済免除制度は廃止されたこと」16.0%など、
「奨学金」のリスクを十分理解しないまま、借り入れる人が少なくない実態がわかります。
また、借り入れ後も「返還の期限を猶予する制度がある」ということについて、知らない人が3割以上もいます。
情報不足か、あるいは理解不足だと思います。
「奨学金」を借り入れるそれぞれの学生の状況を考慮すれば、勢いで借り入れてしまうことは、無理もないことがあるのかもしれません。
例えば、生活の厳しい家庭にある学生が、両親の負担に気遣い、進学のために条件に関係なく「奨学金」を借りることはあると思います。
人生経験の少ない10代後半から20代前半では、ローンや利子の厳しさも知らずに借りることはあるでしょう。
将来を夢見る若者ですから理想の生活を想定して、10年~20年も返済期間の「奨学金」を借りてしまうことも仕方がないこともしれません。
ですから「奨学金」を学生に貸す場合には、専門家がもう少し丁寧にそのリスクを説明していく必要があり、
また周辺の人もしっかりリスクについて指導する必要があるのではないかと思います。
でも実際には「奨学金」で恩恵を受けた人も沢山いて、家庭の経済環境による教育格差を生み出さないためにも奨学金制度は必要だと思います。
しかし、現在の制度ではゆとりがあるうちは何とかなるとしても、就職や病気等で、一度レールを外れてしまうと途端に厳しい状況に追い込まれてしまう制度になっているようです。
この調査において「奨学金」に対して、どう考え、どうあるべきかについての意見があります。
多くの人の共通した認識では、
>奨学金返還は返済能力を考慮すべき
>家庭の経済格差が教育格差につながっている
一方、以下の点では、意見が割れています。
>公的奨学金は給付型にすべき
>高等教育の学費は本人負担すべき
>借金してでも大学へ進学すべき
>高等教育の授業料は無償化すべき
これらの項目に対して、若年層ほど慎重な意見が多く、返還における返済能力は考慮する必要があるけれども、受けた分の教育費や借りたものは本人が返すべきという意見が少なくないようです。
つまり若い人の自己責任に対する意識が高いことが伺われます。
しかしながら、若い人の自己責任にのみ委ねてはいけないと思います。
資源のない日本にとって、若い人財を育てることは、国の「生命線」だと思います。
経済格差が教育格差につながってしまうような仕組みであるならば改める必要があると思います。
つまり「奨学金」を利用して教育を受けたことが、将来の人生の障害になってしまうとすれば、改善していくべきではないかと思います。