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転勤の雇用管理とは?

新緑が眩しい季節になりました。


晴れると爽やかな良い時期ですよね。


ゴールデンウィークは沢山遊んで、しっかり休んで、そして・・・また元気に働かないと。


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今回は「転勤」についてです。


毎年4月は人事異動に伴う「転勤」が多い月だと思います。


もしかすると最近「転勤」があり、やっと生活が落ち着いてきた方もいらっしゃるのではないでしょうか。


ここで使う「転勤」という言葉は、広域に事業活動を展開する企業において、「居住地の変更」を伴う人事異動のことです。


企業にとって「転勤」は、長期間雇う予定の人材の「適正配置」「人材育成」「昇進管理」「組織活性化」などのために行われることが多いと思います。


一方、労働者にとっては、自分のキャリア形成や生活設計に直結する大きな関心事であるだけでなく、実際に「転勤」があった場合、生活の本拠地が長期間にわたり変わり、暮らしに大きな影響を及ぼします。


さらに最近では、女性の就業率の向上共働き世帯の増加高齢化の進行労働力人口の減少などによって、仕事と家庭生活の両立が益々難しくなり、「転勤」に対するハードルも少しずつ上がっているようです。


ですから企業としては「転勤」させる際には、企業の都合だけでなく、労働者の事情や意向との「折り合いをつける」ことがこれまで以上に求められてきています。


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こうした企業のニーズや動向を見据え、厚生労働省から「転勤に関する雇用管理のヒントと手法(平成29年3月30日)」が、企業に対する参考情報として公表されました。


これによると、「転勤」を行う場合の基本的な視点として、企業が「自社にとって不可欠な転勤とは何かを見極めること」が有効であるとしています。


そのために、まず最初に、自社の「転勤」における現状を把握し検証することを勧めています。


例えば「転勤」させる主な目的となっているのは「適正配置」「人材育成」「昇進管理」「組織活性化」等のうち、どれなのかを分析します。


そして、それぞれの目的の占める割合その人数、さらに「転勤」に伴う負担費用(赴任旅費、手当、住宅費等)はどの程度なのか等も調べます。


さらに、実際に「転勤」させたことが実際にどの程度、会社に貢献しているのか、労働者の仕事と家庭生活の両立等の問題などが起きていないのか等も検討します。


その結果、「転勤」の目的に対する効果が得られているのか、効果に見合ったものとなっているかについて、コストも考慮しつつ検証することが有効としています。


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次に「転勤」の目的とされてた「適正配置」「人材育成」「昇進管理」「組織活性化」等の成果は、


本当に「転勤」という方法でなければ果たせないことなのか、他の方法で代替できないのかを検討することを勧めています。


検討の結果、代替はできず、自社にとって不可欠な「転勤」であれば、次にその「転勤」の人数や周期など人事異動全般のあり方から見直すことも必要としています。


このように必要不可欠な異動や「転勤」に絞り込むことで、異動や「転勤」による効果が効率的に得られる可能性が高まります。


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では、具体的に「転勤」の実施方法は、どのようにしたらよいのでしょうか?


ここでは「転勤」に関する雇用管理の考え方を、


「勤務地を限定しない場合」「勤務地の変更の有無や範囲により雇用区分を分ける場合」の事例に分けて説明しています。


1)勤務地を限定しない場合

この場合は、労働者の事情や意向との折り合いをつけ、納得性を高めたりするために、定期的な個人の状況把握や、転勤の打診の段階での意向確認をすること、


また、転勤の時期、頻度や期間等についての原則について社内で共有し、転勤対象の労働者に対しては個別に示すことにより、労働者が自己のキャリア形成等についてある程度の中長期的な見通しが持てるようにすることが望ましいとしています。


2)勤務地の変更の有無や範囲により雇用区分を分ける場合


この場合は、例えば「全国(海外含む)転勤のある雇用区分」「一定の地域ブロック内の転勤がある雇用区分」また「転勤がない雇用区分」などを設定し、「コース別雇用管理指針」に基づき適正に適正な運用し、


雇用区分間の「処遇の均衡」や、労働者の事情や意向の変化に応じた「転換制度」のあり方が重要としています。


また、転勤がある雇用区分の労働者の人数を確保する観点から、転勤を受容するインセンティブ(動機付け)として処遇の差をつける場合、労使で十分に話し合って納得性のある水準にすることが望ましいとしています。


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厚生労働省の「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」はあくまでも参考という位置づけだと思います。


でも、現在、政府が推進している「働き方改革」や「非正規社員格差是正」等が浸透してくると、


近い将来、人事異動のあり方全体を検討すべき時期が来るかもしれません。


その際は、慣行としての「転勤」たり、公私混同や思いつきの「転勤」では対応できないかもしれません。


将来に渡って続く新たな人材確保、また大切な人材の維持と成長促進のためにも、「転勤に関する雇用管理」について考えてみては如何でしょうか。


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