へんてこ社労士のときどきブログ

さかべ社会保険労務士事務所オフィシャルブログ

離婚すると年金はどうなるの?

月曜日の朝です。


すみません。一週間もご無沙汰してしまいました。


10月になって、今日からマイナンバーの発送も始まりますし、その他いろいろな法律も施行されましたね。


今週もまた新たな気持ちで仕事を始めたいと思います。


sakabesharoushi.hatenadiary.jp


新聞で、ある方が書かれている「離婚相談」に関する記事を見ていて思い出したのですが、


社労士の仕事の領域にも、「離婚」に関わることがあります。


今日は、そのテーマで書いてみようと思います。


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例えば「離婚時の厚生年金の分割制度」「離婚時の第3号被保険者期間の分割制度」です。


それぞれ2007年と2008年から導入されましたが、


離婚後の年金の分割について定めた法律です。


この法律は2004年の年金制度改正がもとになっており、そのときは離婚件数が多かった時期(2002年ピーク)でした。


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離婚件数は1990年代初期から2002年までに約15万件から29万件に急激に増えています。 厚生労働省「人口動態統計」)


その背景には、1986年に「男女雇用機会均等法」が施行され、それまでの「結婚したら妻は家庭を守らなければならない」という考え方が、少しづつ変わってきたこともあるでしょう。


また、1980年代半ばから2000年代まで、テレビドラマで「金曜日の妻たちへ(1983~1985)」「恋人よ(1995)」「金曜日には花を買って(1986)」「失楽園(1997)」「青い鳥(1997)」「恋しくて(1996)」「不機嫌な果実(1997)」「Sweet Season(1998)」など、数々の不倫をテーマにしたトレンディードラマ等がある意味でブームだったようです。


また、この頃グローバル化が急速に進み、アメリカなどの離婚率が高い諸外国の考え方に触れる機会も増えたことも、離婚に対する考え方を変えるきっかけになったかもしれません。


実際、内閣府大臣官房政府広報室「男女共同参画社会に関する世論調査では、「結婚しても相手に満足できないときは離婚すればよい」という問いに対して、「賛成」もしくは「どちらかといえば賛成」と答えた人の割合が、


1979年では22%程度だったのが、1992年には約45%まで増え、1997年以降2009年調査まで50%を超え続けています。


このように離婚が受け入れられやすくなる環境となるなかで、それまでなかなか決断できなかった人が一気に離婚に踏み切って、離婚がブームのようになってしまったのではないのでしょうか。


しかし、経済的にはまだ男女格差が大きく、特に中高年の離婚になると、


夫婦の年金の格差は、特に妻にとって老後の貧困につながる可能性がありました。


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「厚生年金の年金額(報酬比例部分)」は、被保険者本人の過去の就業期間や賃金金額をもとに計算されるので、


例えば、夫のみが働いて厚生年金の被保険者となっており、妻が家事に従事していたような夫婦が離婚した場合、妻は厚生年金の被保険者ではないので、離婚後の高齢期の所得水準が非常に低くなり、所得保障が行われない恐れがあります。


したがって、離婚後の夫婦双方の年金受給額に大きな開きが出てしまう問題がありました。


2007年の「離婚時の厚生年金の分割制度」は、


離婚することによって、「年金額」が分割されるのではありません。


離婚する「当事者それぞれが婚姻期間中に支払った保険料納付記録を現在価値に換算した総額」を分割するものです。


例えば、離婚当事者の一方(多くは夫)の標準報酬額を分割して、当事者の他方(多くは妻)がその分割された分の標準報酬額を受けることによって、当事者それぞれ分割後の新しい標準報酬額に基づいて、年金が計算されることになります。


一方(多くは夫)の年金額が分割前よりも少なくなり、分割を受けた側(多くは妻)が、分割により婚姻期間に係る標準報酬額が増えるため、年金額が分割前より多くなります。


その「案分割合」は、当事者(夫と妻)の合意や、家庭裁判所が定める場合がありますが、


当事者それぞれの標準報酬総額の合計額に対する、受ける側(多くは妻)の案分割合は分割前の標準報酬総額の割合を超え、2分の1以下の範囲で決められます。


つまり、受ける側(多くは妻)については、分割前より年金額は増え、多くても年金額総額の2分の1以下で決定されることになります。


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ところで、2008年から施行された「離婚時の第3号被保険者期間の分割制度」は、どう違うのでしょうか?


これは、「厚生年金保険の保険料については、夫婦が共同して負担したものとみなす」ことが制度の考え方の根底にあります。


ですから、「離婚時の厚生年金の分割制度」と異なり、妻から請求すれば、夫の合意が無くても、2分の1の標準報酬額が年金が確保されます。


妻からの一方的な請求でよいので、夫が障害年金を給付されているようなことが無ければ、自動的に決まることになります。


平成20年4月1日以降の期間の標準報酬額からが対象になります。


このように、厚生年金保険制度については、このように万が一、離婚することになっても主に妻の保護を考慮した年金分割制度ができています。


ねんきん事務所や公証役場で手続できます。


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ところで、現在の日本の離婚の実態はどうなのでしょうか?


実は、厚生労働省「人口動態統計」でみると、離婚件数は1年間に約22万2000組(2014年度)で、2002年に約29万組をピークとして、年々減少しています。


今後も、人口減少、少子高齢化、および晩・非婚化の流れが続くことで、離婚件数も減少していくことが想定されます。


最近あまり耳にしなくなりましたが、一時「熟年離婚」という言葉が流行ったことがありました。


実際、中高年の離婚は増えているのでしょうか?


実は、厚生労働省「人口動態統計」でみると、40歳以上の中高齢の離婚は、ほぼ横ばいになっています。


しかし、39歳以下の離婚件数が減少している(婚姻数自体減少している)ため、40歳以上の中高齢の離婚割合としては増加しています。


一方で、厚生労働省「人口動態統計」では、40歳以上の中高齢の再婚率は高まっていることもわかります。(中高齢の婚姻の流動化?)


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離婚時の年金分割制度については、今後、収入の男女格差が少なくなり、婚姻数が減少し、離婚件数が減少していけば、徐々にその重要性は無くなっててくるかもしれません。


ただ、このブログを書きながら考えたのは、婚姻制度が不安定になってくると、将来の婚姻の在り方がどのようになっていくのか、新しい在り方があるのかという疑問です。


日本の抱えている問題、例えば経済成長、年金問題、健康保険問題、介護問題、労働力不足・・・様々な社会問題の大きな原因の一つが「少子高齢化だと思います。


特に「少子化問題」では、子供が生めて、育てて、教育を受けさせる安定した環境が必要だと思いますが、「婚姻という仕組み」以外で行う方法があればいいのですが・・・大きな課題ではないかと思います。


福山雅治さんもご結婚されたし、結婚ブームにでもならないでしょうかね・・・。