へんてこ社労士のときどきブログ

さかべ社会保険労務士事務所オフィシャルブログ

これから働き始める人へ

昨日車で出かけたら、いつも以上にパトカーや白バイを見かけました。


春の全国交通安全運動が4月10日から16日だそうです。


気を引き締めて安全運転しないと。


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では、今日の話題です。


社会に出て働き始めた人は、意欲をもって前向きに仕事に取り組んでいる方が多いと思います。


でも・・・就職後3年以内に会社を辞めてしまう割合は、中学卒業者で7割、高校卒業者で5割、大学卒業者で3割、


いわゆる753現象があると一般的に言われています。


辞めてしまう原因はいろいろとあるのでしょうが、「働くときのルールや制度を十分に理解していない」ことも理由のひとつだと思います。


今日の話題は「働くルール」という基礎的な内容にします。


ベテランの皆さまにとっては「当たり前のこと」ばかりだと思いますが、我慢してお付き合いください。


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会社で働くときは、会社と労働者「働くこと」について「契約」を結ぶことから始まります。


労働者は「働く」こと、会社は働いたことに対して「賃金を支払う」という「労働契約」です。


会社が労働者を採用するときは、賃金、労働時間、場所や業務内容などの労働条件を伝えることが義務づけられています。


この伝える文書のことを「労働条件通知書」といいます。会社によって呼び方や書き方が異なることはありますが、労働条件が記載されている文書です。


ここに書かれている労働条件について、しっかりチェックしてください。


会社と労働者が「労働契約」を結べば、どんな労働条件でもよいという訳ではありません。


例えば「24時間休憩無しで働く」などの条件は、いけないことは明らかだと思います。


「労働契約」の内容については「就業規則」などのルールを守らければいけませんし、


就業規則」をつくるときは「労働基準法」「労働契約法」などの法律を守らなければいけません。


つまり、「労働契約」に書かれている労働条件は、


労働基準法」や「労働契約法」など各種の労働関係の法律によって、一定の規制を受けていることになります。


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ところで、労働関連の法律の中心である労働基準法とは、どんな法律でしょうか?


会社と労働者が共に守らなくてはならない法律として、労働者が劣悪な労働条件で働くことがないように労働者を保護することを目的としています。


この法律で定められているルールは最低基準なので、就業規則や労働契約などは、それ以上の条件にしなければいけません。


また「労働契約法」というのは、


会社と労働者の間で労働条件に関するトラブルが増加してきたことを受けて、平成20年にできた法律で、


労働条件のトラブルを未然に防止するために、「労働基準法」より詳しく労働契約のルールが定められています。


会社で決めている就業規則とは、


10人以上の労働者を雇っている場合に作成する義務があり、個々の会社が定めている働くときのルールです。


労働時間や賃金などだけでなく、セクハラ、パワハラなどの服務規律なども決められていることがあります。


仕事をするときは、会社も労働者も、法律、就業規則、および労働契約をしっかり守らなければいけないことになっています。


そして、「働くルール」が守られることよって職場環境は良くなり、業績にも好影響があると思います。


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一方、俗にブラック企業と呼ばれている会社は、このような守るべき「働くルール」が機能していない会社です。


このような会社は、社員の定着率が低いことが多いので、慢性的に人手不足の状態の場合が多いと思います。


ですから、頻繁に求人し、求人広告には良いことしか書かれていない場合があります。


もし就職して何かおかしいと思ったら、できるだけ早めに周囲の人や専門家に相談したほうがよいと思います。


「働くルール」の主なチェックポイントを挙げると、


1)労働時間


労働基準法では、「法定労働時間」は1日に8時間、1週間に40時間を超えて働かせてはならないと定められています。


この時間を超えて働かせる場合には、「36協定」という労使協定を結び、「割増賃金」を支払う必要があります。


そして「割増賃金」を通常の賃金の何割増にするかの最低基準(25%など)も法律で定められています。


もし労働時間がしっかり管理されていなかったり、「割増賃金」が支払われていない場合は注意が必要です。


2)休憩

労働基準法では、労働時間が1日6時間を超えるときは45分以上1日8時間を超えるときには60分以上の休憩を与えなければいけないことになています。


3)休日


休日は1週間に1日、または4週間に4日与えなくてはならないことになっています。


これを「法定休日」といい、「法定休日」働いたときには「割増賃金」が発生します。


4)労働保険、社会保険

労災保険は、1人でも労働者(パート、アルバイトでも)がいれば加入義務があります。


雇用保険も1人以上労働者(日雇い、短期雇用でも)がいれば加入する必要があります。


働いている事業所が「法人」だったり、雇用されている人が5人以上であれば、原則として「健康保険」や「厚生年金保険」に加入する必要があります。


加入条件の詳細については、事業所の条件や労働者の労働時間・日数によって多少異なりますが、法律をチェックしてみてください。


5)セクハラ、パワハラ


守るべきルールが明確になっていない場合は、要注意だと思います。


他にもチェックすべきポイントはありますが、主なものだけに絞ってみました。


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でも、チェックすることばかりに過敏になりすぎると、上司や先輩方とギクシャクしたり、肝心の仕事に手がつかなくなったりしてしまいます。


大切なことは、働き始めた皆さんがいきいきと前向きに働くことができる職場かどうかだと思います。


働きやすいと感じる職場だったら、「働くルール」がしっかり機能していると思います。


ですから、ときには困難なことや苦しいこともあり仕事が大変なこともあると思いますが、


まず、仕事をしっかり覚えて一生懸命に真剣に取り組んでみてください。


そして、もし仕事や職場での苦しみや悩みが理不尽に重いときは、遠慮せずに周囲の人や専門家にご相談してください。


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経営者も人財不足ですか?!

今、新入社員や人事異動で、慌ただしい職場も多いと思います。


4月になると、「お花見」どころではないのかなあ。


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さて本題に入ります。


人口減少や産業構造の問題などから、多くの分野で労働力の確保が難しくなっています。


しかし、不足しているのは労働者に限ったことではないようです。


中小企業の経営者も・・・


少し前に、ある中小企業診断士の方から、


税理士等とご一緒に「中小企業の事業継承問題」について取り組んでいるお話を伺いました。


「中小企業の事業継承問題」というのは、簡単に言うと「中小企業の経営者の後継者が見つからない」ということです。


少子高齢化が急速に進むなか、中小企業の経営者の平均年齢は年々上昇し、60歳を超える経営者が全体の51.8%になっています。(帝国データバンク「全国社長分析」2012年)


そして、中小企業の経営者が引退する年齢は現在70歳前後になっています。(中小企業庁委託「中小企業の事業継承に関するアンケート調査」2012年11月)


つまり、あと数年で中小企業の約半分の経営者の年齢が70歳になり、「事業継承問題」に直面することが予想されているのです。


しかし、実際は中小企業の約半分弱しか後継者を決めていない可能性があります(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「事業継承アンケート調査2005年12月)


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中小企業の場合、一般に会社の所有と経営が十分に分離されておらず経営者に株式の過半が集中していることが多く、


「親族への世襲」で事業の継承されることが多いと思います。


しかし、少子化で子供がいなかったり、子供が事業を継ぐ意思がなかったり、十分な経営能力がある親族がいなかったりして、「親族への世襲」が困難な場合が増えています。


そのような事情から、「親族以外」の役員や従業員、また社外の第三者へ継承する事業引継ぎに関心が高まっています。


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でも、それはそんなに簡単ではないようです。例えば・・・


先代の株式を持つオーナー社長が、優秀な役職員を選んで「代表取締役社長」を譲っただけでは、株式を持たず議決権の無い「雇われサラリーマン社長」になってしまいます。


ですから、先代社長は「自身の持株も一緒に譲る」必要が出てきますが、通常の場合、役職員は自社を買収できるほどの資金は持っておらず、また金融機関から買収資金を調達できるあてもありません


そして先代社長が亡くなり、会社の株が何人かの親族に分割相続されてしまうと、相続人達はその会社に何らの思い入れや愛着もなく意見が一致しない可能性もあり、経営が破たんすることもあります。


また、先代オーナー社長が金融機関から「個人保証の借入金」をしていた場合、後継者にも「個人保証」を要請します。しかし、負担が重く受けられず、金融機関との関係を維持することが難しくなることもあります。


そして、こうした経緯を見ていた他の社員が次期経営者を目指さなくなることも考えられます。


また、中小企業の場合「計画的に後継者を育成する」ことも難しいと思われます。


しかしながら、中小企業の9割以上の経営者は、自分の後も事業を他者に引き継ぎたいと考えています。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「事業継承」アンケート調査」2005年12月)


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近年、日本の企業の大多数を占めている中小企業は減少傾向であり、


地域経済を疲弊させてしまうだけでなく、


日本経済の土台になる高い技術力や高い商品サービスを失っていく可能性があります。


これらを円滑に次世代に引き継いでいくことは、重要なことだと思います。


平成27年度には、全国47都道府県で、経済産業省所管の独立行政法人中小企業基盤整備機構が、事業引継ぎ支援センター」を開設しました。


また、事業継承税制(相続税・贈与税)の緩和


事業継承融資制度により親族以外の後継者への自社株式の引継ぎに向けた対応、


さらに個人保証への対応についても国が検討しています。


また、税理士、公認会計士、金融機関や様々なコンサルタント等も親身に相談に対応しているそうです。


日本の大切な財産である多くの優良な中小企業は、是非、将来に渡って元気で経営を続けていって欲しいと思います。


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女性の賃金は過去最高ですが・・・

お花見の季節。


お天気が不安定で、朝夕は冷えますね。


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さて、ここから今日の話題です。


「賃金構造統計基本統計調査」という国の調査をご存知ですか?


これは、厚生労働省が統計法に基づいて、現金給与、超過労働給与、賞与等毎年7月に調査するものです。


平成27年度の調査結果が、2月18日に公表されましたので、その内容をごく簡単にご紹介します。


1)一般労働者の賃金の推移


男性の平均賃金は33万5,100円で前年より、1.7%増加しました。


そして、女性は24万2,000円で1.7%増加し、


過去最高の賃金になっています。


如何ですか?本当に実感がありますか?


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2)性別による一般労働者の賃金


男性も女性も50歳から54歳が賃金のピークになりますが、そのときの男女の賃金の格差は16万3,300円もあります。


この調査によると入社時には男女の賃金はほとんど差がありませんが、その後、女性の賃金の上昇が少ないことが分かります。


男女格差は小さくなったとは言われていますが、調査結果には歴然とした差がみられます。


3)学歴別にみた一般労働者の賃金


男性では、大学・大学院卒の賃金のピーク(50~54歳)が54万4,000円で、
高校卒34万8,300円で、その差は19万5,700円です。


一方、女性は、大学・大学院卒の賃金ピーク時(65~69歳)で42万7,100円で、
高校卒のピークが22万5,000円で、その差は20万2,100円になっています。


男女いずれも、入社後大学・大学院卒の賃金は急カーブで上がりますが、


高校卒は入社後あまり上昇しないようです。


4)企業規模別にみた一般労働者の賃金


大企業、中企業および小企業の賃金とも、男女とも前年を上回っています。


しかし、男性の賃金は、ピーク時で大企業が51万4,800円、中企業が40万6,700円、小企業は33万2,500円で企業の大きさによる格差は明確にあります。


一方、女性のピーク時の賃金は、大企業が30万7,300円、中企業が26万8,900円、小企業は23万2,900円で、


企業の規模による差はありますが、男性の賃金に比べるとその差は小さくなっています。


これは、企業の規模に関わらず


女性の賃金が、入社以降はあまり上昇しないことが理由だと思われます。


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5)雇用形態別の賃金


男女計の正社員の賃金は32万1,100円で、正社員以外では20万5,100円となっており、
正社員と正社員以外の労働者の間に大きな格差があることがわかります。


年齢階級別にみると、正社員の場合は入社後、年齢とともに安定して賃金は上昇しますが、


正社員以外の労働者は、男女とも、年齢が高くなっても賃金の上昇はあまりみられないことがわかります。


6)産業別にみた賃金


金融業、保険業、教育、学習支援業の賃金が男女とも高く


一方、宿泊業、飲食サービス業の賃金は低い傾向にあります。


厳しい業界はいつも変わりません。


7)短時間労働者の賃金


短時間労働者の賃金は、男性が1,133円/時間(前年比1.2%増)、女性が1,032円/時間(前年比2.0%増)と、いずれも過去最高になっています。


しかし、年齢階級別でみると30歳以降はあまり賃金単価が上昇しないことがわかります。


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如何でしょうか?


労働者全体の賃金は「前年より上昇」し、


女性や短時間労働者は「過去最高の賃金」になったという調査結果になっていますが、実感はあるでしょうか?


一方、男女、学歴、産業別、正規/非正規による格差は、年齢を重ねるにつれてより大きくなっていくことも調査結果から分かります。


大企業に勤める大卒の男性正規社員は、年齢が上がるにつれて賃金は安定して大きく上昇する傾向ですが、


それ以外の労働者は、年齢とともに賃金が安定して上昇する傾向は少ないようです。


多くの労働者が、将来の人生設計(結婚、出産、住居、育児、教育、介護など)を描くことが難しい原因がここにもあるように思いますが、如何でしょうか?


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奨学金の重い負担

春分の日が過ぎて、関東地方もそろそろ桜の開花宣言


卒業、転出や退職など、お別れの季節ですよね。


でも直ぐに入学、転入や入社などの出会いも始まる季節です。


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さて、今日の話題です。


最近、運転中ラジオで国会中継を聞いていたら奨学金の返還問題」に関する質疑応答がありました。


質疑の背景に労働者福祉中央協議会」という組織が調査したアンケート結果(2016年2月29日発表)したデータがあったようなので、それについて少し調べてみました。


ちなみに労働者福祉中央協議会とは、日本の労働団体、労働者福祉に係わる事業団体、生活協同組合、地方福祉協議会等で構成されている組織です。


奨学金の返還問題」とは・・・


現在、学生時代に「奨学金」を利用している人は、2人に1人(34歳以下、53.2%)にも及ぶそうです。


利用している人は平均312万円を借入し、月々平均約1万7千円返還しています。500万円以上借入している人も1割ほどいて、月々3万円以上も返還している人がいます。


しかし、このように「奨学金」で借金を抱えているにもかかわらず、現実には、大学等を卒業後、不安定雇用や低賃金労働に就いてしまう人が増加し、返したくても返せない人が増加しているのだそうです。


実際、「奨学金」の負担感を「苦しい」と感じている人は39.0%で、特に非正規労働者では56.0%と過半数を超えています。


奨学金」の負担感から、進学を諦めたり、希望の就職より当面の借金返済のための仕事に向かったり、結婚、出産・子育てを諦めたり、持家を諦めたりする人もいるようです。


このままでは、親から子への世代間の「貧困の連鎖」が懸念されます。


実際に、当調査で奨学金」の返還が、人生設計に対してどのように影響しているかの結果があります。


「結婚」に影響しているという人は31.6%で最も高く、次いで「持家取得」が27.1%「仕事や就職先の選択」が25.2%、「子育て」が23.9%「出産」が21.0%となっています。


つまり奨学金」の返還がネックになって、人生設計の大切な計画を、先延ばしにしたり、諦めたりしている若者が少なくないということだと思います。


特に「結婚」については、正規労働者では500万円以上、非正規労働者では200万円以上の「奨学金」の借入があると、「影響してる」と感じている人が過半数を占めています。


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ところで「奨学金」は、これを利用することで学業を続けることができるという大きなメリットがあるわけですが、


日本の「奨学金」特有のリスクもあります。例えば・・・


貸与型(返還義務あり)しかないこと(海外では返還義務のない給付型がある)


有利子の貸与が多いこと


3カ月以上の延滞はブラックリストに載ること


自宅への電話等の督促が行われること


>延滞は年5%の延滞金が賦課されること


教員の返済免除制度は廃止されたこと


などが注意点として挙げられますが、


奨学金」を借入した人で、これらを知っていたのは


「貸与型しかないこと」39.5%、「有利子の貸与が多いこと」44.6%、「3カ月以上の延滞はブラックリストに載ること」
23.5%、「自宅への電話等の督促が行われること」27.5%、「延滞は年5%の延滞金が賦課されること」22.3%、「教員の返済免除制度は廃止されたこと」16.0%など、


奨学金」のリスクを十分理解しないまま、借り入れる人が少なくない実態がわかります。


また、借り入れ後も「返還の期限を猶予する制度がある」ということについて、知らない人が3割以上もいます。


情報不足か、あるいは理解不足だと思います。


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奨学金」を借り入れるそれぞれの学生の状況を考慮すれば、勢いで借り入れてしまうことは、無理もないことがあるのかもしれません。


例えば、生活の厳しい家庭にある学生が、両親の負担に気遣い、進学のために条件に関係なく「奨学金」を借りることはあると思います。


人生経験の少ない10代後半から20代前半では、ローンや利子の厳しさも知らずに借りることはあるでしょう。


将来を夢見る若者ですから理想の生活を想定して、10年~20年も返済期間の「奨学金」を借りてしまうことも仕方がないこともしれません。


ですから「奨学金」を学生に貸す場合には、専門家がもう少し丁寧にそのリスクを説明していく必要があり、


また周辺の人もしっかりリスクについて指導する必要があるのではないかと思います。


でも実際には「奨学金」で恩恵を受けた人も沢山いて、家庭の経済環境による教育格差を生み出さないためにも奨学金制度は必要だと思います。


しかし、現在の制度ではゆとりがあるうちは何とかなるとしても、就職や病気等で、一度レールを外れてしまうと途端に厳しい状況に追い込まれてしまう制度になっているようです。


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この調査において「奨学金」に対して、どう考え、どうあるべきかについての意見があります。


多くの人の共通した認識では、


>大学などの高等教育の学費が高過ぎる(高額の奨学金が必要)


奨学金返還は返済能力を考慮すべき


>家庭の経済格差が教育格差につながっている


一方、以下の点では、意見が割れています。


>公的奨学金給付型にすべき  


高等教育学費は本人負担すべき  


>借金してでも大学へ進学すべき  


高等教育授業料は無償化すべき


これらの項目に対して、若年層ほど慎重な意見が多く、返還における返済能力は考慮する必要があるけれども、受けた分の教育費や借りたものは本人が返すべきという意見が少なくないようです。


つまり若い人の自己責任に対する意識が高いことが伺われます。


しかしながら、若い人の自己責任にのみ委ねてはいけないと思います。


資源のない日本にとって、若い人財を育てることは、国の「生命線」だと思います。


経済格差が教育格差につながってしまうような仕組みであるならば改める必要があると思います。


つまり「奨学金」を利用して教育を受けたことが、将来の人生の障害になってしまうとすれば、改善していくべきではないかと思います。



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働く時間が短い正社員とは?

3月17日は「彼岸の入り」・・・


春は牡丹餅(ぼたもち)を食べます。


小豆の赤色は災いが降りかからないようにするおまじないの効果があるそうです。


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では、話題を変えて、


「短時間正社員制度」という仕組みがあるのをご存知でしょうか。


所定労働時間が短くても正社員として適正な評価と公正な待遇が図られた働き方です。


2010年6月に「仕事と生活の調和推進トップ会議」で決定された行動指針で、


2020年までに企業の29%で導入されることが政府の目標になっています。



正社員は、必ずしもフルタイム勤務(週40時間程度、1日8時間、週5日勤務等)である必要はありません。


「短時間正社員」とは、


1週間の所定労働時間が、フルタイム正社員と比べて短い正規型の社員であって


1)期間の定めのない労働契約を締結していること


2)時間当たりの基本給および賞与・退職金等の算定方法等が同種のフルタイム正社員と同等であること


のいずれにも該当する社員のことを言います。もちろん社会保険も適用対象になります。


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「短時間正社員制度」を導入するメリットは沢山あります。例えば・・・


1)子育て期の社員の離職を防止
 
育児をしている女性の4割以上が、正社員のままで短時間勤務を希望しているけれども、実際には約6割の女性が離職し、仕事を始めても「パート・アルバイト」で働くか「働いていない」状態の人が多くを占めています。(内閣府「女性のライフプランニング支援に関する調査」平成19年)


短時間正社員制度を導入することで、このような育児に伴う離職を減らせるかもしれません。


2)介護を行う社員の離職を防止

ある民間企業11社に勤める40歳以上の社員を調査した結果、将来、介護に直面した際「仕事が継続できる」と答えたのは30%弱でした。(東京大学社会科学研究所「仕事継続を可能とする介護と仕事の両立支援のあり方」従業員の介護ニーズに関する調査報告書(平成25年))


勤務時間が短い正社員の選択肢ができることで、介護離職に対する不安も改善できるかもしれません。


3)自己啓発やボランティア活動等、社員の働き方やキャリアの幅を広げ、社員のモチベーション向上

自己啓発を行っている正社員は増加傾向ですが「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」という人が約6割という調査結果があります。(厚生労働省「能力開発基本調査」平成24年度)


短時間正社員になり、自分の時間が増えることで、自己啓発の余裕が出てくるかもしれません。


4)意欲・能力の高いパートタイム労働者のモチベーションの向上


高い意欲と能力があっても、様々な事情で勤務時間を延ばすことができない労働者がいますが、多くはパートタイム労働者という就業形態を選んでいます。(厚生労働省「パートタイム労働者総合実態調査」平成23年)


このような人に対して正社員等への道を閉ざされていると、その意欲や能力を活用する機会を失ってしまう可能性があります。


ですから短時間正社員へ転換できるキャリアルートを作ることで、その意欲と能力を十分活かすことができるかもしれません。


5)高年齢者の働くモチベーションの維持向上


55~69歳で適当な仕事が見つからなかった就職希望者のうち約5割が「短時間勤務で会社などに雇われたい」という希望をしているという調査結果があります。(労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用・就業の実態に関する調査」平成22年)


このような高年齢者を短時間正社員とすることで、専門性や生産性の高い高年齢者の効果的な活用が可能になるかもしれません。


6)心身の健康不全からのスムーズな職場復帰


心身の健康不全で休職した社員を職場復帰させる際、最も問題になることは「どの程度仕事ができるか」ということだそうです。全国の10人以上の民間事業所の調査で約6割がそう回答しています。(労働政策研究・研修機構「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査」平成23年)


短時間正社員とすることで、「どの程度仕事ができるか」を適切に見極めながら、勤務時間や勤務日、仕事内容等を決めていくことができます。
 

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メリットばかり挙げましたが、実は難しい課題も沢山あります。


1)時間が短縮しても仕事量や内容が変わらず制度が形骸化してしまうことがある


短時間労働勤務に合わせた仕事の配分の見直しが適正にされないと、以前と労働量が変わらず、労働時間が以前と変わらないままになってしまうことがあるので、


人事部門や管理職の職場等が、仕事の内容について本人や周辺にしっかり伝え、定期的にチェックし、修正していくことが非常に重要になります。


2)補助的・定型的な仕事を割り当てられ、責任ややりがいのある仕事を任せてもらえないことがある


このようなことになると、結果として労働者のモチベーションが低下やキャリア形成の遅れにつながってしまうかもしれません。やはり職場マネジメントが重要になります。


3)評価が低くなり、昇進・昇格も大幅に遅れることがある


人事部門人事評価についての考え方を明示していなかったり管理職の知識や理解が不足だったりすると、


勤務時間が短いというだけで一律に低い評価になる等、公正な評価が行われず、労働者のモチベーションが低下してしまうおそれがあります。


人事部門評価の方法や運用を明確にして、管理職に周知徹底するだけでなく、労働者にも考え方などを開示することが大切です。


4)制度利用に対して、周囲の社員や、顧客・取引先から理解や協力を得られないことがある


短時間正社員に対して、周囲の社員の不満が出たり、十分な理解や協力が得られないことがあり、また顧客や取引先の時間を制限してしまいクレームにつながることも考えられ、制度の運用に支障をきたしてしまう可能性があります。


こうした不満等については、職場の仕事の負担に偏りが生じ、フルタイム正社員が負担する仕事が増え、長時間労働につながることも原因のひとつになると思います。ですから職場全体の働き方の見直しをして、仕事の偏りを減らすことも必要だと思います。


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このように短時間正社員制度は、多くのメリットが期待できますが、同時に多くの難しい労務管理上の問題もあります。


この制度導入には、人事部や管理職の職場マネジメントは非常に重要で、バランスよく、きめ細かく、丁寧にやる必要があります。


しかし、それだけでは難しいかもしれません。


労働者同士がお互いに理解し合い、助け合う風土も必要であり、


社会全体も短時間正社員を受け入れる環境を整える必要があるかもしれません。


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どの労働者も、あるときはフルタイム正社員であり、育児・介護等するときには短時間正社員に転換し、またフルタイム正社員に戻る・・・というような柔軟な仕組みになれば、それぞれの労働者が受益者であり、支援者になります。


そして、個々の労働者が多様な働き方をしながら、自分自身の生活も大切にできるように思います。


そうなれば、それぞれの労働者が助けたり助けられたりしながら「お互いさま」の風土が醸成され、社会環境も整備されてくるかもしれませんね。


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「楽隠居」を夢見る時代ではないですよね

暖かくなってきて、少し天気が不安定です。


でも春の息吹きがあちこちで見られて、少し嬉しくなります。

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さて、今回は雇用保険法等の改正法案について書きます。


近年、少子高齢化による労働力人口」が減少するなか、今後、高齢者や女性などの就業率を引き上げることが重要な課題だと思います。


政府は1月29日雇用保険法等の一部を改正する法律案」閣議決定し国会に提出しました。


この改正法案は政府の「一億総活躍社会の実現」に向けた改革のひとつだそうです。


高齢者雇用の一層の推進、育児・介護休業に関する制度の見直し、労働者の離職防止や再就職促進に向けた法律改正です。


具体的には、


【1.失業等給付の保険料率の引き下げ】 
(徴収法、2016年4月1日施行予定)


雇用情勢が改善し、失業等給付の積立金残高が6兆円を超えたため、

雇用保険料率を、現行の1.0%から0.8%に引き下げます。


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【2.高年齢者の希望に応じた多様な就業機会の確保と就業環境の整備】 
雇用保険法、徴収法、高齢法、2017年1月1日施行予定)】


これまで雇用保険から除外されていた65歳以降に新たに雇用される高齢者が雇用保険の適用対象となります。


そして65歳以上であっても、失業した場合、高年齢求職者給付金が支給され、教育訓練給付育児休業給付金介護休業給付金の支給対象になります。ただし、企業の負担増を考慮して、保険料は2019年度分までは免除することになります。


シルバー人材センターの取り扱い業務は、これまで「臨時的・短期的(おおむね月10日まで)または「軽易な業務」(おおむね週20時間程度まで)に限定されていましたが、


派遣・職業紹介に限り、週40時間まで就業が可能になります。


これらは高齢になってからも働き続ける環境づくりです。


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【3.育児休業・介護休業等の制度の見直し】(育児・介護休業法、雇用保険法、2017年1月1日施行予定)


育児休業の対象となる「子」の範囲が拡大します。特別養子縁組(家庭の事情によって養親が戸籍上の親になり、実親との関係が無い養子縁組)の「子」等も対象になります。


育児休業の申出ができる有期契約労働者の要件が緩和されます。


子の看護休暇は、現行では小学校就学前の子を養育する労働者が、自業主に申し出ることで1年度に5労働日(子が2人以上の場合は10労働日)を限度として取得できる休暇ですが、これが半日単位で取得できるようになります。


それから、介護休業はこれまで対象家族1人につき、93日を限度に1回の取得しか認められていなかったのですが、通算93日を3回まで分割取得が可能になります。


また介護中の労働者が、介護のために所定時間外労働の免除を請求した場合、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定時間外の労働をさせることはできないことになります。


介護休暇(介護休業ではありません)は、介護中の労働者が事業主に申し出ることにより、1年度に5労働日(対象家族が2人以上の場合は10労働日)を取得できることになっていますが、これが半日単位で取得できるようになります。


介護休業給付の給付率は賃金の40%ですが、これを67%へ引き上げます。


また、職場のマタハラ等を防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務づけることになります。


これらは育児や介護している労働者の離職防止対策のひとつだと思います。


【4.その他】
男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、雇用保険法、2017年1月1日施行予定)


失業等給付の受給者が早期に再就職した場合に支給される再就職手当の受給率が上げられます。

支給日数を3分の1以上残して再就職した場合は残日数の60%(現行50%)、3分の2以上残して再就職した場合は残日数の70%(現行60%)となります。


これらは早期に再就職することを促進する対策のひとつです。 


また求職活動支援費として、例えば、就職面接のための子の一時預かり費用などの求職活動に伴う費用について、新たに給付の対象になります。


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「一億総活躍社会の実現」には賛否両論ありますが、


今後、多様な働き方が可能になる社会に変えていくことは重要なことだと思います。


また、少子高齢化と人口減少でどの業界でも労働力が不足している現状では、老若男女ともそれぞれの生活に合わせて、できるだけ働く必要が益々高まってくると思います。


将来は年金生活も厳しいので、高齢になっても働き続ける人は増え、


以前のように悠々自適に老後を過ごせるような人は、ほんの一握りになるかもしれません。
  

でも「健康で働けるうちは、できるだけ働き続ける」ことも悪くないのかなあ・・・
  

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「同一労働同一賃金」への課題

前回のブログから、少し間が空いてしまいました。


いつも読んで頂いている皆さまには、大変感謝しております。


私事ですが、実母が亡くなりました。最後まで病床から、私に「風邪ひかないようにね」と言うような人でした。


申し訳ありませんが、今後も少しの間、ブログの記載が変則的になるかもしれません。


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今回は、最近また話題になっている同一労働同一賃金について書きます。


安倍首相が1月22日の施政方針演説で「同一労働同一賃金」の実現を目指すと表明しました。


そして、「一億総活躍大臣」も、その実現に向けて具体案を議論していく方針を示しました。


さらに2月5日の衆院予算員会でも、首相はその「法制化」の可能性について述べました。


ご存知のとおり「同一労働同一賃金」とは、正規雇用非正規雇用を問わず、同じ仕事には同じ賃金を払うということです。


当然のように思えますが、残念ながら日本ではそのようにはなっていません。


いくらでも事例はありますが、一例を挙げれば、


工場の同じ生産ラインで、非正規の期間雇用の従業員と正社員が同じ仕事をするようなケースが見られますが、


正社員のほうが賃金がかなり高いことが多いと思います。


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欧米などでは、「同一労働同一賃金」の原則は一般的に導入されているそうです。


それは歴史的に、欧米の雇用は「職種」を基本とした労働市場があり、


労働者は企業が求めている特定の職種や役職に応募し、採用されればその職種や役職で働き、そして必要なくなれば退社します。


さらにキャリアアップを求めるなら、自分にふさわしい職種や役職にまた応募し、チャンスを掴む努力をするのが当たり前という前提があります。勤続年数による昇給はないので「同一労働同一賃金」になっていくのです。



しかし、日本の雇用は歴史的に「就社」であり、「企業のメンバーになる」という仕組みです。


メンバーになると雇用継続が保証される代わりに、企業内でどんな仕事でも、どんな場所でも働くことになります。そして勤続年数に応じて昇給していきます。


つまり企業のメンバーである期間が長い(ベテラン正社員)ほど賃金は高く、逆に、メンバーの期間が短い(若い正社員)ほど低くなり、


メンバー(正社員)でないビジター(非正規労働者)はさらに賃金が低くなるということになります。


ですからメンバーとしてのキャリアの違いで、たとえ同じ仕事をしたとしても同じ賃金にはならない、ということになってしまうのです。


いわゆる「年功序列です。


このように欧米とは異なる歴史的背景をもつ日本の労働環境に、全く異文化の「同一労働同一賃金」という考え方を導入するわけですから、


かなり高いハードルがあると思います。


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もちろん、仮に正社員と非正規労働者が、一見、同じ仕事をしていたとしても、


正社員の場合は、


突発的な事態や繁忙期には責任をもって長時間働くことが当然に求められ、


懇親会などの日々の業務に無関係な情報交換にも参加することが暗黙の了解になっていたり、


共同体の団結のための研修への参加が義務付けられていたり、


人事異動は辞令1枚でどこにでも行かねばならず、


会社への忠誠心を強く求められていると思います。


一方、非正労働者は、必ずしもそのような義務や重荷を負うことは多くないかもしれません。


ですから、何をもって「同一労働」にするのかということは大変難しい問題であり、しっかりと決めておく必要があると思います。


他にも解決すべき課題はあります。


同一労働をする正社員と非正規労働者の賃金を近づける場合、企業の経営上、総人件費が上げられないのであれば、非正規労働者の賃金を上げると、正社員の賃金を下げざるを得なくなります。


また非正規労働者の賃金を上げて、総人件費が大きく増える場合非正規労働者の多い中小企業では、人件費負担が中小企業を中心に経営に打撃を与える懸念もあります。


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以前、上記のブログで書きましたが、既に9月に「同一労働同一賃金推進法」が参議院で採決されています。


その際は、労働者派遣法改正案の対案として、民主党維新の党などが共同で提出し、


紆余曲折の結果、施策の実施が遅延され、法制化という強い拘束力を持たない法案として成立しました。


しかし今回は、与党による参院選を睨んだ野党対策として、これまで以上に踏み込んでいます。


もし「同一労働同一賃金」が普及すれば、非正規労働者の賃金が上がり、結婚・子育て支援につながる可能性があるだけでなく、消費の拡大効果も期待でき、経済に好影響があるかもしれません。


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「一億総活躍」や「アベノミクス推進策」のひとつとして同一労働同一賃金」を目玉政策としているとも言われていますが、


政府がやると言った以上は、不公平感のない仕組みをつくってほしいと思います。


しかし、そのためには雇用制度について抜本的に変えるくらいの強い意志がないとできないと思います。


繰返しになりますが、ハードルはかなり高いと思います。


経団連も政府に歩調を合わせているようですが、


日本の産業を支える大切な中小企業でも納得して導入できるような仕組みでないと、実現は難しいと思います。


しかし「労働者を公正に処遇する」ことは大変重要なことですから、


社会全体で雇用制度を改めて見直すことができる良いチャンスが来たのではないかと思っています。


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