へんてこ社労士のときどきブログ

さかべ社会保険労務士事務所オフィシャルブログ

過労死等の防止大綱とは?

今日からお仕事の方も多いと思います。


お彼岸も過ぎて、良いシーズンになります。また再スタートです。


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政府は平成27年7月24日、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を閣議決定しました。


労働者にとって問題である過労死等を、将来的にゼロにすることを目指し、今後3年間で取り組むべき施策や考え方を示すものです。


平成26年11月に既に施行されている「過労死等防止対策推進法」で示された4つの対策等について、進め方、基本的な考え方を提示しています。


4つの対策とは、 ① 調査研究  ② 啓発  ③ 相談体制の整備 ④ 民間団体の活動に対する支援  の側面から進め方の基本的考え方を示しています。


その内容について、以下に記載します。


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① 調査研究

過労死等の実態や発生要員等を解明するため、医学、労働/社会分野、経済学等の関連分野も含め、多角的、学際的な視点から調査研究を早急に行うことになっています。


例えば不規則勤務、交替制勤務、深夜労働、出張の多い業務、精神的緊張の強い業務といった要因だけでなく、

その背景となる企業の経営状態や短納期発注を含めた様々な商取引上の慣行等の業界を取り巻く環境、


労働者の性格や睡眠・家事も含めた生活時間等の労働者の状況等、複雑で多岐にわたる要因及びそれらの関連性を分析していく必要があります。


ですから医学や労働・社会分野のみならず、経済学等の関連も含め、国、地方公共団体事業主、労働組合、民間団体等の協力のもと、


多角的、学際的な視点から調査研究を進めていくことが必要です。


医学分野については、過労死等の危険因子やそれと疾患との関連の解明し、効果的な予防対策に役立つ研究を行うことが必要です。


そして、その調査研究の成果を踏まえ、過労死等の防止のための健康管理の在り方について検討することが必要です。


また、例えば、自動車運転手、教職員、IT産業、外食産業、医療等、過労死等が多く発生しているとの指摘がある職種・業種や、


若年者をはじめとする特定の年齢層の労働者について、より掘り下げた調査研究を行うことが必要です。


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② 啓発

若年者を対象とする教育活動を通じた啓発の重要性を掲げています。また、労働慣行を変える取組についても指摘しています。


国民に対する啓発として、


過労死等を防止するためには、職場のみでなく、職場以外においても、周囲の「支え」が有効であることが少なくありません。


ですから、過労死等を職場や労働者のみの問題と捉えるのではなく、国民一人ひとりが、過労死等に対する理解を深めるとともに、それを防止するこの重要性について自覚して、関心と理解を深めるよう、


国、地方公共団体、民間団体が協力・連携して、広く継続的に広報・啓発活動に取り組んでいくことが必要です。


教育活動を通じた啓発としては、

若い世代から、労働条件をはじめ、労働関係法令に関する理解を深めることも重要です。


ですから、民間団体とも連携して、学校教育を通じて啓発を行っていくことが必要です。


職場の関係者に対する啓発としては、


職場の関係者に対する啓発は極めて重要であり、特に、それぞれの職場を実際に管理する立場にある上司に対する啓発や、若い年齢層の労働者が労働条件に関する理解を深めるための啓発も重要です。


それから労働基準や労働安全衛生に関する関係法令、事業主が講ずるべき措置などに対する理解の促進やその遵守のための啓発指導を行う必要があります。


また、過労死等の主な原因の一つである長時間労働の削減や、賃金不払残業の解消、年次有給休暇の取得促進のためには、


単に法令を遵守するだけではなく、長時間労働を行っている職場においては、これまでの働き方を改め、仕事と生活の調和(ワークライフバランス)のとれた働き方ができる職場環境づくりを進める必要があります。


その際、それぞれ職場の実情に応じた積極的な取組みが行われるよう働きかけていくことが必要です。


そして、このような職場環境改善に対する積極的な取組みは企業価値を高めること、逆に、過労死等を発生させた場合にはその価値を下げてしまうことにつながり得ることを啓発することも必要です。


その一方で、政府としても、過重労働対策やメンタルヘルス対策に取り組んでいる企業が社会的に評価されるよう、そのような企業を広く周知することも必要です。


長時間労働が生じている背景には、様々な商慣行が存在し、個々の企業における労使による対応のみでは改善に至らない場合もあります。ですから、取引先や消費者など関係者に対する問題提起等により、個々の企業における労使を超えて改善に取り組む気運を社会的に醸成していくことも必要です。


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③ 相談体制の整備


労働者が早期に気軽に相談できるように民間団体と連携した多様な相談窓口の整備が必要と指摘しています。職場で労働者の不調に、上司、同僚、産業保健スタッフ、家族・友人等が気づき、相談に行くようにする共通認識が必要とされています。


相談窓口は、単に設置するだけではなく、労働者のプライバシーに配慮しつつ、必要な場合に労働者が躊躇なく相談に行くことができるよう環境を整備していくことが必要です。


また、職場において、労使双方がその対策の重要性を認識して、労働者や管理監督者等に対する教育研修等を通じ、


労働者が自らの身体面、精神面の不調に気づくようにしていくとともに、上司、同僚も労働者の不調の兆候に気づき、産業保健スタッフ等に知らせることができるようにすることなど、相談に行くことに対する共通理解を形成していくことが必要です。


産業医等のいない中小事業場に対しても相談対応を行う、産業保健総合支援センター地域窓口について、充実・強化を図ることも必要です。


また、家族・友人等も過労死等の防止のための対策の重要性を認識し、過重労働による労働者の不調に気づき、


相談に行くことを勧めるなど適切に対処できるようにすることが必要です。


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④ 民間団体の活動に対する支援

過労死等の対策が国民的な運動として取り組まれるように、各団体の連携を促し、活動内容の周知を進めることも重要です。


例えば、家族を過労死で亡くされた遺族の方々が悲しみを乗り越えて、そして同じ苦しみを持つ方々と交流を深め、それぞれの地域において啓発・相談活動を展開する民間団体や、


全国規模での電話相談窓口の開設などを通じて過労死等で悩む労働者やその家族等からの相談に携わっている弁護士団体が活動しています。


また、国・地方公共団体との連携の要となる民間団体や、研究者、弁護士等の専門家が研究会や啓発活動等を行う民間団体の組織化が進んでいる状況にもあります。


さらに、産業医の育成や研修等を通じて、過労死等の防止に向け活動している民間団体もあります。


このような過労死等の防止のための活動を行う民間団体の活動を、国及び地方公共団体が支援するとともに、民間団体の活動内容等の周知を進めることが必要です。


sakabesharoushi.hatenadiary.jp


過労死等は、本人はもとより、遺族または家族にとって計り知れない苦痛であり、企業や社会にとっても大きな損失になります。


このような悲劇を繰り返さないためには、


政府はもちろんのこと、地方公共団体や民間団体、企業、職場の上司や同僚、それからご家族や友人などが一体となって、


だれもが働きやすい職場環境を作っていくことが求められているのではないかと思います。