へんてこ社労士のときどきブログ

さかべ社会保険労務士事務所オフィシャルブログ

妊娠・出産・育児をしながら働く女性のための制度

2015年も残り少なくなりました。


もう休暇を取っている方もいるでしょうし、年末年始も関係なく、お忙しく働いている方もいらしゃると思います。


寒いですが、身体に気を付けて元気で頑張ってください。


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今日は、前回のブログに続く内容です。


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今回のブログのテーマは、「妊娠・出産・育児をしながら働く女性を支援する制度」にしたいと思います。


ここでは、原則として継続して働いている女性労働に対して、法令で定められている制度について要点を列挙します。(それぞれの詳細については長い文章になるので省きます)


ですから、下記について会社が従業員に対して行うべき制度として、おそらく就業規則には記載されていると思います。


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【職場生活での母性保護に関すること】


>時間外労働、休日労働、深夜業の制限、変形労働時間制の制限(労働基準法第66条)


妊娠している女性は、体調が不安定なことから、時間外労働、休日労働、深夜業および変形労働時間について免除を請求できることになっています。


>軽易業務への転換(労働基準法第65条)


妊娠中は、肉体的負担が大きい業務(例えば1日中売り場に立っている等)の場合は、他の軽易な業務への転換するよう会社に請求できます。


>危険有害業務の就業制限(労働基準法第64条)


一定以上の重量物の取り扱いや、生殖毒性等を有する有害物質が一定濃度以上に発散する場所等での業務については、妊娠、出産機能等に有害なので、妊娠の有無や年齢等によらず全ての女性を就労させることは禁止されています。


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【産前・産後休業、育児休業に関すること】


>産前・産後休業(労働基準法第65条)


使用者は、6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産する予定の女性が請求したときや、産後8週間を経過しない女性を就業させてはいけないことになっています。
(特に、産後6週間は強制休業です。ただし、それ以降は本人が請求し、医師が支障なしと認めれば働けます)


パートやアルバイト等の女性も産前・産後休業を取得できます。


産前・産後休業中の賃金については労働基準法では会社に義務付けていませんが、健康保険の被保険者であれば出産日以前42日から出産日後56日まで「出産手当金」が支給されることが定められています。


「出産手当金」は標準報酬月額の3分の2に相当する額になりますが、


会社から給与の全部か一部が支払われているときは支給されません。しかし給与で支払われた額が「出産手当金」より少ない場合は、その差額が支給されます。


>産前・産後休業中の社会保険料(健康保険、厚生年金、介護保険)の免除
(平成24年8月公的年金制度の財政基盤および最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律


会社が全国健康保険組合健康保険組合に申し出れば、女性従業員だけでなく会社も免除されます。


>解雇制限(労働基準法19条)


産前・産後休業の期間及びその後30日間の解雇は禁止です。


出産育児一時金(健康保険法101条)


健康保険の被保険者が出産した場合は、一児の出産につき原則42万円が支給されます。(双子なら84万円)


母体保護が目的なので、妊娠85日以上であれば、死産、流産、人口妊娠中絶でも支給され、また父不明の婚外子出産についても支給されます。


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>育児休業(育児・介護休業法第5条~第9条)


従業員が会社に申し出れば、子が1歳になるまで(またパパが育児休業を取得する場合は、子が1歳2カ月になるまでの1年間)の間、育児休業を取ることができます。


もし1歳になっても待機児童で保育所が決まってなかったり、万が一、1歳になる前にママが亡くなってしまった場合などは、申出によって1歳6カ月になるまで育児休業をとることもできます。


育児休業中は、有給かどうかは会社によって異なりますが、雇用保険の一般被保険者で被保険者期間等の要件や一定の手続きを充たせば「育児休業給付金」が給付されます。


「育児休業給付金」は1歳未満の子の育児休業を取得した等の一定要件を満たした場合、原則として休業開始時の賃金月額の67%が支給されることになっており、6カ月経過後は50%になります。


>育児休業中の社会保険料(健康保険、厚生年金、介護保険)の免除(健康保険法159条)


会社が全国健康保険組合健康保険組合に申し出れば、従業員も会社も免除されます。

 
育児休業は正社員だけでなく、パートやアルバイト等でも取得できますし、


契約期間が決まっていても、1年以上同じ会社で継続雇用されていて、子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる場合は、育児休業は取得できます。


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【産後休業後の復職に関すること】


>時間外労働、休日労働、深夜業の制限、変形労働時間制の制限(労働基準法第64条)
>危険有害業務の就業制限(労働基準法第66条)


産後1年を経過しない女性には、妊娠している女性と同様に、上記労働制限が適用されます。


>育児時間(労働基準法第67条)


生後1年に達しない子を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分間の育児時間を会社に請求することができます。


>母性健康管理措置(男女雇用機会均等法第12条、第13条)

産後1年を経過しない女性は、医師等から指示があったときは、健康診査に必要な時間の確保を、会社に申し出ることができます。


また、指導を受けた場合には、必要な措置を受ける時間も確保することができます。


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【子が1歳になった後も利用可能な制度】


>短時間勤務制度(育児・介護休業法第23条)


会社は、一定の条件を満たす3歳未満の子を養育する男女の従業員について、短時間勤務制度(1日原則として6時間)を設けなければならないことになっています。


>所定労働時間の制限(育児・介護休業法第16条)


会社は、一定の条件をを満たす3歳未満の子を養育する男女の従業員から請求があった場合は、所定外労働をさせてはならないことになっています。


>子の看護休暇(育児・介護休業法第16条)


小学校入学前の子を養育する従業員は、会社に申し出ることにより、


年次有給休暇とは別に、子が1人なら1年につき5日まで、子が2人以上なら10日まで、病気やケガをした子の看護、予防接種及び健康診断のために休暇を取得することができます。


ただし、有給か無給かは会社の定めによります。


>時間外労働、深夜業の制限(育児・介護休業法第17条)


小学校入学前の子を養育する一定の従業員から、会社に請求があった場合は、


1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはならないことになっています。また深夜(午後10時から午前5時まで)において労働させてはならないことになっています。



このように、働く女性が、赤ちゃんを産んだり育てたりする負担を軽減させて働きやすい環境をつくるように、いくつもの制度が法律で定められています。


しかし、このような法律や制度をご存知でない方もいらっしゃると思いますので、より良い労働環境に向けてご参考にしていただければと思います。


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働く妊婦さんやお母さんの権利

週末から街はクリスマスモードです。お店に入ればデコレーションとクリスマスソング。


でも毎年のことですが、アンケートでは自宅で過ごす「おうちクリスマス」が多いようですね。


忘年会も多い時期ですから・・・


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今回は、最近、時々話題になる「マタハラ」について触れたいと思います。


平成27年1月23日、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長から通達が出されています。


妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い(いわゆるマタハラ、マタニティーハラスメント)に関する解釈」に関することです。


どういう通達か事例で説明すると、


例えば、女性労働者が「妊娠したこと」について会社に伝えたとき、しばらくして、会社から「仕事の能力がない」等との何等かの理由によって降格されてしまったとしたら、


今までは、仮に「妊娠したことを理由とした降格ではないか」という疑いを持ったとしても、その因果関係について、被害者である女性側が立証する必要がありました。


しかし、この通達によって、


女性が降格や解雇等の不利益な取扱いを受けたときに、その前に「妊娠や出産をした事実」があれば、原則として「因果関係があると判断する」ということになります。


言い換えると、降格や解雇等の不利益取扱いがマタハラかどうかは、会社側の意図に関係なく処分の時期と妊娠や出産との時期が近いかどうかで客観的に判断される、ということです。(原則として、妊娠・出産、育休等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いがなされた場合)


一方、会社側に降格や解雇等を行ったことに関して合理的な理由があるのであれば、


「業務上の必要性」「特段の事情が存在すること」あるいは「本人の自由な意思に基づいて同意していること」等を会社側が証明しなければならないことになった、ということです。


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もともと、妊娠や出産期の女性は精神的にも肉体的にも大変な時期であり、不満があっても女性から声を上げ難い状態でした。


しかし、この通達によって、因果関係の立証責任が無くなったため、妊娠や出産に対する理不尽な処遇によって泣き寝入りしたり、裁判で負けたりすることも今後は減るのではないかと言われています。


この通達があった背景は、平成26年10月23日の最高裁の判決です。妊娠を理由に広島県の女性を不当に降格させたことを原則「違法」とした内容でした。


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厚生労働省では、不利益な取扱い(マタハラ)の事例として、

以下のような理由によって、解雇、雇止め、降格、減給、不利益な配置変更や人事考課などを行った場合は「違法」になることを周知しています。


1)妊娠中、産後の女性労働者について
>妊娠、出産

>妊婦健診などの母性健康管理措置

>産前・産後休業

>軽易な業務への転換
 
>つわり、切迫流産などで仕事ができず、労働能率が低下

>育児時間が必要

>時間外労働、休日労働、深夜労働をしないこと


2)育児をしている労働者(男性も該当する場合あり)について

>育児休業

>短時間勤務

>子の看護休暇

>時間外労働、深夜業をしないこと


不利益な取扱い(マタハラ)は違法であり、


行政指導や、悪質な場合は事業主名が公表されたり、仮に裁判になると、損害賠償金や慰謝料等の可能性もあります。


国としても、「女性の活躍」を推進していますので、マタハラ対策は厳しくなっていくことが想定されます。


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今後も、「女性の力」はこれまで以上に貴重な戦力になると思います。


企業としても、お母さんやお母さんになる人も含めて働きやすい環境を作っていくことは、貴重な人材を維持していくためにも、益々大切になるのではないでしょうか。


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社会人の基礎力とは?

初めてゴルフのプロから指導を受けました。


ちょっと見てもらい、スウィングを矯正されましたが、的を得ていてすごく納得感がありました。


「さすがプロ」という感じ。若いのに凄いなあ。


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ところで、


会社が求人する場合、主にその会社で必要とされる条件、例えば特有の技術やスキル等の能力を期待し、応募者の書類や面接でそれを判断して採用していると思います。


しかし、採用する人材には、是非、備えていて欲しい能力というものがあります。


そのひとつが「社会人基礎力」と言われる能力です。


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経済産業省が、平成18年2月に産学の有識者による委員会(座長:諏訪康雄法政大学大学院教授)において、


「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」というものを


下記の3つの能力(12の能力要素)からなる「社会人基礎力」として定義しました。


「3つの能力」とは、


1)前に踏み出す力(アクション)
   一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力


2)考え抜く力(シンキング)
   疑問を持ち、考え抜く力


3)チームで働く力(チームワーク)

   多様な人々とともに、目標に向けて協力する力


そして、「3つの能力」には、以下の12の能力要素が含まれています。


1)前に踏み出す力(アクション)

① 主体性   ・・・ 物事に進んで取り組む力


② 働きかけ力 ・・・ 他人に働きかけ巻き込む力


③ 実行力   ・・・ 目的を設定し確実に行動する力


2)考え抜く力(シンキング)

④ 課題発見力 ・・・ 現状を分析し、目的や課題を明らかにする力


⑤ 計画力   ・・・ 課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力


⑥ 創造力   ・・・ 新しい価値を生み出す力


3)チームで働く力(チームワーク) 


⑦ 発信力   ・・・ 自分の意見を分かり易く伝える力


⑧ 傾聴力   ・・・ 相手の意見を丁寧に聴く力


⑨ 柔軟性   ・・・ 意見の違いや立場の違いを理解する力


⑩ 状況把握力 ・・・ 自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力


⑪ 規律性   ・・・ 社会のルールや人との約束を守る力


⑫ ストレスコントロール力 ・・・ ストレスの発生源に対応する力


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経済産業省で提案した「社会人基礎力」は、本屋に並ぶ多くの著名な先生方のビジネス指南書に書かれていることのように、


「目から鱗の落ちるような内容」ではありませんが、


「普遍的なこと」ではないかと思います。


長く社会人をやっていると、これらの能力は「社会人として働くのに必要なことばかり」だと実感します。


でも「社会人基礎力」に挙げられている能力は教わって身に付くというより、


もともと個性として備わっていたり、


失敗を経験をしながら、自分自身で気付いて、悩んで、考えないと身に付かないような能力のように思われます。


「社会人基礎力」は、採用後の会社の教育訓練で伸ばしていくには限界があるとも言われているようです。


そう考えると、採用する段階で「社会人基礎力」の高い人を採用したいとは思われる方が多いと思いますが・・・


実際、そのような能力を全て兼ね備えているような人はごく稀と思いますし、なかなか自分の会社に来てくれないかもしれません。


ですから採用面接では「社会人基礎力」を自ら改善する意欲とその潜在能力があるかを見極めることが大切ではないでしょうか?


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文章を書きながら、自分自身も「社会人基礎力」が不足していることを感じています。


これからも自分をどんどん変えていかないと・・・


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知らないうちにブラック企業に

雨が強く降って、暖かくなって、強い風が吹いて、急に寒くなって・・・変な天気でした。


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ところで、大手居酒屋チェーンが、子会社の新入社員の過労死自殺を会社の責任と認め、和解したことがニュースになりました。


女性は入社後1カ月間の時間外労働が114時間(過労死認定ラインは1カ月では100時間)、午後3時頃出社して翌朝3時半頃退社ですが、タクシー帰宅は認められず、始発電車まで店内で時間をつぶしてから帰宅。2か月間で休みは4日間。


その間に、自己啓発という研修でレポート提出や理念集の暗記等も指示されていたとのことです。


希望を抱いて入社し、僅か2カ月後に亡くなってしまいました。


極めてひどい労働環境です。痛ましいことです。


この居酒屋チェーンは、近年「ブラック企業」のひとつとして批判が広がっていました。


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ところで「ブラック企業」という言葉は、一般的には労働者を長時間働かせる企業や、パワーハラスメント等で労働者を精神的に追い込む企業等に対して使われると思います。


企業にとっては、一度ブラック企業などと報道されてしまうと、企業に大きなダメージを受ける可能性があります。


例えば


1)企業イメージの低下

>顧客離れによる売上減少

>新規採用に悪影響


2)従業員の健康状態の悪化
>生産性の低下

安全配慮義務違反による訴訟リスク


3)社内全体の士気の低下

離職率の上昇

>労使紛争の増加


また訴訟になった場合には、居酒屋チェーンのように損害賠償が懲罰加算で通常の2倍(1億3400万円)になるだけでなく、他の社員の未払い残業代等の多額な賠償が加わります。さらに、他の労働者からの訴訟が続く可能性があります。


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多くの企業では、「従業員を大切にする経営」をしています。


そして労働法令を遵守し、適正な労務管理をしていると思います。


しかし、一部の悪徳企業では、それを意識的に怠っていたり、


また仕事に厳しく真面目な企業でも、従業員に対し「昔はこんなの当たり前だった」とか「根性が足らん」ということで、無意識のうちにブラック化していくこともあり得ます。


ですから厚生労働省労働基準局)でも、ブラック企業」に対する監督指導を強化しています。


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具体的には「過重労働解消キャンペーン」という重点監督指導が、平成26年と平成27年の11月に行われました。


この監督指導では、特に

「長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場」

離職率が極端に高いなど若者の使い捨てが疑われる事業場」

などが対象になりました。


平成26年11月の監督指導では、4,561事業場が対象となり、そのうち3,811事業場(83.6%)で労働基準関係法令で違反がありました。


主な違反内容としては、「違法な時間外労働」が2,304事業場(50.5%)、「賃金不払い残業」が955事業場(20.9%)でした。


それらの事業場に対して、是正・改善に向けた指導が行われたそうです。


平成27年11月の結果についてはこれからですが、おそらく今後も行政側の指導も強化されてくると思います。


多くの企業にとっては当たり前のことだと思いますが、


今後も労働法令を遵守して適正な労働管理を行うことは、重要な経営事項となっていくことと思います。


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ダイバーシティーマネジメント?

12月になってから、時間が経つのがさらに早くなったような・・・


気忙しい感じです。


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ダイバーシティー・マネジメント」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?


簡単に言うと、「多様な人材の活用を、企業戦略の一環として取り組む経営」のことです。


もう少し付け加えると、


「女性、高齢者、外国人、障がい者」など、組織内の多様な人材が、活き活きと働くことができる職場環境を整えることによって、
多様な人材の能力を最大限に発揮してもらい、経営活性化、業績アップを実現する経営


のことです。


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でも、資金や人材も限られる中小企業では、「そんな余裕はない」とお考えになる経営者もいると思います。


さらに、中小企業では「役立つ優秀な人材の確保」することや「従業員の定着」が喫緊の課題であり、まず、それが出来てからの話だ、と言われる方もいると思います。


そのとおりだと思います。


しかし「役立つ優秀な人材の確保」をイメージしたとき、それを画一的・硬直的な枠で決めてしまっていることはないでしょうか?


例えば「20代から50代半ばまでの働き盛りの健康な日本人男性」というように・・・。


それから「今後も活躍できる人材」が職場にいたとしても、


私生活での病気、介護や育児等によって、業務上でのペースダウンしたり、思うように働けなくなったりすることも起こり得ると思いますが、そんな場合に、退職させてしまったようなことはないでしょうか?


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でも、もし誰でも分け隔てなく活躍できる環境を与えられ、


たとえ病気、介護や育児が必要な事態が従業員に起こったとしても、安心して働き続けられる制度などがあったら、


活き活きと働ける職場環境になり、おのずと従業員の定着率が上がり、会社に貢献しようとする優秀な従業員も育つのではないでしょうか?


一般的に、企業から一定の支援を受けた従業員には、会社のために一生懸命働こうという心理が働くものだと言われています。


つまり、ダイバーシティー・マネジメントは企業戦略の一環でもあるのです。


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では実際に、ダイバーシティー・マネジメントでは、どのようなことに取り組むのでしょうか?


例えば、以下のようなことがあります。


1)女性の活用

>男性とは異なるセンス、高いコミュニケーション能力、細かい気遣い等があり、多様な市場ニーズに対応


2)高齢者の活用

>熟練した技術や経験による知恵の活用、流出および消滅の防止
>今後も増加が見込める質の高い労働力


3)障がい者の活用
>活かせる能力の尊重と発揮
助成金の活用
障がい者に優しい職場の改善から誰にでも優しい職場への変化


4)外国人の活用

>日本人にはない感覚や考え方、外国語の活用、国外への市場拡大への対応


5)育児・介護サポート

>就職希望する応募者が増加する可能性
>投資家の評価が高まる可能性
>優秀な人材の退職防止策に
>社内に「おたがいさま」精神が定着
>社会的信頼度の向上

6)病気サポート(社員の職場復帰プログラム)

>優秀な人材の定着
>従業員の士気向上
>組織への帰属意識の向上


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おそらく企業(特に中小企業)にとって、ダイバーシティー・マネジメントは、導入当初のハードルは多少高いと思います。


でも「日本の将来の姿」を見据えた視点に立てば、「優秀な人材の確保」や「従業員の定着」だけでなく、企業のこれからの発展にとってもメリットは多いのではないかと思います。


ですから、それぞれの企業が、無理をせず、経営の実態を考え、各企業にあった独自のダイバーシティー・マネジメント(多様な人材の活用の仕組み)をつくっていくことが望ましいのではないかと思います。


「多様な労働者が能力を発揮でき、士気が高い企業にすること」は、多くの経営者が望まれていることだと思います。


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労働基準監督官!!

昨日から師走・・・年末で多くの皆さまが忙しい月です。


このところブログの更新が不規則になってしまってすみません。


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今日の話題は、労働基準監督官です。


過重労働や未払い賃金等が社会問題化し、いわゆるブラック企業を取り締まる組織として、「労働基準監督署(以下、労基署)」は、よく知られている存在だと思います。


近頃では、労働者の権利意識が高まり、労務トラブルを抱えた働く人の「駆け込み寺」のひとつにもなっているようです。


そこに配置されている「労働基準監督官(以下、監督官)」は「労働Gメン」とも呼ばれ、大きな権限を持っています。


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監督官は「行政官」であり司法警察官」であることが、労働基準法で定められています。


例えば「行政官」としては、「臨検(事業所の立ち入り調査)」が裁判所の令状を取らなくてもできます。そして、帳簿や書類の提出を求め、使用者や労働者に尋問ができます。


国税査察官(いわゆるマルサ)も臨検、捜査および差し押さえはできますが、裁判所の許可が必要です。


また、司法警察官」としては、犯罪捜査、被疑者の逮捕および送検を行う権限があり、手錠、捕縄等を携帯することができます。平成24年の送検数は1100件を超えています。


ただし、「司法警察官」として、家宅捜査や逮捕をするときには、「警察官」と同じく裁判所が発行する令状が必要です。


事業主等は、臨検を拒否することは、原則としてできないことになっていて、法令違反等があった場合には「是正勧告」、違反ではなくても改善すべき場合は、「指導票」の交付がされる場合があります。


事業主等は、「是正勧告」等が交付された場合は、指摘された所を改善し「是正(改善)報告書」を労基署に提出することになります。


しかし、「労働Gメン」として強い権限を持つ監督官ですが、全国に430万ほどある事業場(会社等)を、約3200人の監督官で管理するというのは、かなり大変なことで時間もかかり、25年に1回程度しか事業場を臨検できないということになるそうです。


また、労働者派遣法、パートタイム労働法、育児介護休業法や労働契約法など、カバーする法律が広がり、また、メンタルヘルスや各種ハラスメント等、内容も広範囲になっています。


ですから、監督官はどんな問題にも対応できる体制ではなく、是正勧告があった事業場や労災が多い事業場など、目を付けたところに絞り込んでいく傾向があるのではないかと思います。


また、労働者などからの内部告発や相談などの「申請」についても、監督官は、必ずしも全て受けるわけではなく、担当官の内容の判断により対応するかどうかが決まるそうです。


それから、労働契約や解雇理由などのような「民事」にあたる事件の場合は、介入できないという限界もあります。


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いざとなったら、労働者にとって頼れる存在である監督官ですが、


やはり、労働関係の多くのトラブルは、原則として、労働者と事業主が話し合いながら解決していくことが望ましいのではないかと思います。

年休は会社から与えられるもの?

かなり寒くなりましたが、


今は、都会でも田舎でもイルミネーションが飾られていて、


凍えても夕方から出かけたくなるような気分にさせられてしまいます。


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今日は「年次有給休暇(以下、年休)」についてです。


「年休」は、就業規則等で決められていて、使用者から与えられてるもの、と思っている方はいませんか?


実は「年休」は労働基準法第39条で定められています。


そして、労働者の「年休権」が発生する要件は、

1)雇い入れの日から起算して6カ月以上継続勤務

2)全労働日の8割以上の出勤


この2つの要件を充たした労働者に対して、法律上当然に、継続勤務年数に応じた日数の年休が付与されることになっています。


それから、このブログでもご紹介していましたが、週の所定の労働日数が1日~5日であっても、上記要件を満たせば、一定日数を与えられることになっています。


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最高裁の「白石営林署事件」(昭和48年3月2日)で、「年休の法的性格」について最終的な決着がついていますが、それによると、


労働者が、具体的な年休の始期と終期を特定して「時季を指定」したときは、使用者が適法な「時期変更権」を行使しない限り、使用者の承認の有無にかかわらず年次有給休暇が成立します。


つまり、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の「承認」というような付与行為の概念を入れる余地がないことを明らかにしました。


ですから「年休権」がある労働者が、年休取得する「時季」を申し出た場合、法律上当然に付与され、使用者は「時季変更権」だけがある、ということになります。


では「時季変更権」の行使は、どのような場合に認められるのでしょうか?


労働基準法第39条で「事業正常な運営が妨げられる場合」とされています。


事業の正常な運営を妨げられる場合」とは、いくつかの判例で示されていますが、


年休取得を指定された時季に、その労働者の労働が事業運営にとって不可欠であり、かつ、代替勤務者を確保するのが困難である場合とされています。


しかし、いくつかの判例では代替勤務者の「確保の困難性」を証明することは、意外にハードルが高いようです。


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このように使用者は、労働者の年休権の行使を「拒否」することはできませんが、


例えば、労働者が使用者との調整を図ることなく、長期連続休暇(例えば1カ月)を指定した場合はどうでしょうか?


会社としては困ってしまうこともありますよね?


判例では「その休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、休暇の時期期間についてどの程度の修正、変更を行うかについて、使用者は合理性の有する範囲で、ある程度裁量的判断(時季変更)をすることが許される」、


とされた最高裁判例時事通信社けん責事件」(平成4年6月23日)があります。


また、事業の運営を妨害すること知っていて故意に休暇を取ったり、「休暇直前に」休暇を申し出たりした場合なども、時季変更が認められた判例もあります。


「年休権」は労働者の強い権利だとしても、


やはり使用者と労働者が、事業運営に支障がないよう調整しながら、気持ちよく休暇を取るようにするほうがよいのではないかと思います。


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いずれにしても、年休は、週休日とは別に、賃金の保障された休暇を付与することによって、労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的とするものです。


そのために、労働者が取得しやすいように法律で保護されているのではないかと思います。


しかしながら、厚生労働省が10月15日に発表した「就業条件総合調査」では、


2014年度の民間企業の年休取得率は、47.3%で、前年より1.5ポイントも低下しました。


特に中小企業では、年休取得率が低い傾向にあります。


今はどの業界でも人手不足は否めませんし、非正規労働者が増えていることも、年休取得率が低い原因のひとつかもしれません。


しかし一方で、休暇取得によって健康で高品質の労働力を再生産し続けることは、長期的な視点考えれば、会社の発展にとって大切なことではないかと思います。


そのためにも、会社としては、積極的に年休や他の特別休暇も含めて休暇活用ができる仕組みや制度を整備して、労働者が気持ちよく仕事に集中できる環境を作ることもご検討されてもよいのではないかと思います。


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