会社でも「いじめ問題」が多いんですよ!
もう2月、如月(きさらぎ)になってしまいました。
今年は2月3日が「節分」です。4日は「立春」で「暦の上では春」になりますね。でも、まだ寒さが続くかもしれませんが・・・
少し前になりますが、厚生労働省は2015年6月12日に「平成26年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。
聞きなれないとは思いますが「個別労働紛争解決制度」というのは、
個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などのトラブルを未然に防止し、早期に解決を支援する仕組み です。
都道府県労働局長、紛争調整委員会や労働の専門家(一部の社労士も)などが「助言・指導、あっせん」などによって解決を図るものです。
厚生労働省が公表した内容を見ると、個別労働紛争の相談件数は「いじめ・嫌がらせ」が3年連続トップでした。
労働相談件数23万8,806件のうち「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は6万2,192件で、前年の59,197件より増加しています。
以前は「解雇」とか「労働条件の引き下げ」などに関する相談件数の方が多かったのですが、最近の雇用情勢の改善等の影響もあるかもしれませんが、代わって「いじめ、嫌がらせ」がトップになっています。
学校の「いじめ」は現代の社会問題としてクローズアップされることが多いのですが、
実は社会人になってからも、意外に「いじめや嫌がらせ」の問題が多いといことが分かります。
最近は「いじめ」に繋がるような「セクハラ」については、
男女雇用機会均等法等で企業名公表など「罰則」があり、
また、「パワハラ」についても、職場環境に悪影響を及ぼすことから、
多くの会社では、これら「ハラスメント」については厳しく対応し始めていると思います。
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おそらく最近、会社の「就業規則」にセクハラ防止の条項があるのを、ご覧になっている方も増えていると思います。
近頃では「マタハラ」(妊娠出産をきっかけに嫌がらせ等を受ける)なども問題になっています。
厳しい労働環境のもとで、様々な人が混在する職場では、これからまだまだ「いじめ」に繋がるような新しい「・・ハラ」が出てくるかもしれません。
対策として最も大切なことは、職場の良好な人間関係を作っていくことですが、
そのためには、「管理監督者や従業員の教育指導」は欠かせないと思います。
また、会社として「いじめや嫌がらせ行動」に対する「毅然とした態度」を示すことも大切であり、
適正な行動規範と、守るための懲罰規定をつくる必要があるかもしれません。
それは結果として、士気やモラルの高い職場作りに結びつき、会社の業績向上を目指す土台になると思います。
また今後、人材の多様化(高齢、女性、国籍等)や境遇の多様化(育児、介護等)が進めば、職場で「お互いの心を思いやること」がもっと求められるようになるかもしれません。
厚生年金加入逃れの基準?
「大寒」(1月21日)も過ぎて、まだまだ寒い日が続きます。
暖かい季節が待ち遠しいです。
今日は、最近あったニュースから。
厚生年金保険は、会社などで働いている人のための公的年金制度です。
老後の生活の安定を図るための老齢年金や、
万が一障害者になった場合、本人とその家族のための障害年金、
さらには本人が不幸にして亡くなった場合、遺族のための遺族年金
など、長期にわたる給付を行い、生活の不安を解消するための公的保険制度です。
保険料は、給与額に応じて、働いている人と会社が折半して支払う仕組みになっていて、
将来受け取る老齢年金額は、厚生年金保険が平均で月14万7千円程度、自営業者が加入している国民年金は平均で月5万4千円程度で、厚生年金のほうが国民年金より一般的に多くなります。
厚生年金保険は、原則として、株式会社などの法人、それから常時5人以上の従業員を使用する事業所で使用されている70歳未満の人(正社員や一定のパート労働者等)は、加入させなければいけないことになっています。
(要件の詳細や例外については、複雑で長くなるので、ここでは書かないことにします)
しかし、法人であったり、常時5人以上の従業員を使用する事業所であっても、厚生年金に加入していないところがあります。
厚生労働省の2015年12月の報告では、国民年金加入者1742万人のうち、約200万人の人が厚生年金に入る資格があるとのことでした。
しかも、200万人のうち約6割を20代から30代の若い人で占めている(20代が71万人、30代が52万人)のだそうです。
つまり、若い方で厚生年金に加入できるのに、加入していない実態があるということです。
若い世代の将来の生活の不安を少しでも減らすためにも、私的年金よりもはるかに好条件である厚生年金保険制度を適正に加入させるすべきだと思います。
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しかしながら、事業主が保険料負担を逃れるために会社が加入の申請をしていないのか、厚生年金についての知識がないのか、それとも働いている人が給料からの保険料天引きを望んでいないのか、その実態は明確ではありません。
ですから、厚生労働省では、日本年金機構が2017年度末までに、厚生年金の加入可能性のある事業所の実態を調査する方針を決めたそうです。
その際、調査を繰り返し協力を求めても応じなかったり、厚生年金保険への加入逃れをする「特に悪質な使用者」には刑事告発も検討しているようです。
刑事告発は、あくまで指導を徹底するための最終手段としての位置づけで、
その告発に踏み切るかどうかの基準も検討していることを、塩崎厚生労働大臣も述べています。
しかし、厚生年金保険や健康保険等の社会保険の保険料の負担は決して軽くありません。中小零細企業のなかには、その負担に耐えられないところもあると思います。
そのような事業所には、性急な措置ではなく、段階的に粘り強く指導を続けていくことになると思います。
ただ、若く働き盛り世代の人たちに将来の安心を与え、結果として安定した雇用となり、継続的な事業の継続的な発展を期待するのなら、厚生年金制度の適正な運用をすることは、長期的に見て会社にとってメリットになることと思います。
女性活躍の土台
本格的に雪が降ってしまいました。
出かけるのは大変です・・お気を付けください。
降った後も大変ですし・・・
ところで、台湾で初の女性総統が誕生しました。
女性が元首(大統領など)となっている国は、他にも韓国、ドイツ、ブラジル、ネパール、チリ、中央アフリカやクロアチア(その他数か国)などがあります。
もしかしたら、アメリカでも女性大統領が選出されるかもしれません。
今、世界では女性活躍の時代になってきたことがはっきりしてきました。
日本でも、スポーツ、芸術や経営等の各分野での女性の活躍が、数多く見られます。
政府や近年の厚生労働省の施策でも、女性の活躍に向けた方針を明確にしています。
しかし日本の実態は、
非正規労働者の問題、待機児童の問題、労働環境の問題、介護の問題・・・様々な障害があり、仕事だけでなく、「仕事外」での女性の負荷が、相変わらず大きいかおしれません。
少子化対策の問題なども、社会全体で支える仕組みがしっかり作り上げないと、女性がもっともっと活躍できる社会にならないと思います。
そこで、女性の労働の現実を表しているデータが何かないか、少し調べてみました。
厚生労働省で、平成27年12月9日に発表した政府統計で、
「第3回21世紀成年者縦断調査(平成24年成年者)及び第13回21世紀成年者縦断調査(平成14年成年者)の結果」という調査データがありました。
これは、20歳から30歳半ばの全国の男女(および配偶者)を対象として、仕事の有無、業種形態、出産後の就業意欲、家事・育児時間、職業観などを継続的に調査して、
少子化対策などの厚生労働行政施策に役立てることを目的としているそうです。
この調査結果のポイントとしては、
「女性が結婚後に離職した割合」は、平成14年調査では31.0%でしたが、
平成24年では20.4%と減少しました。
やはり、家計が以前よりも厳しくなっているからなのでしょうか?
ちなみに、仕事をする理由として、最も多かったのは女性も男性も「生計を維持するため」でした。次に多い理由は「家計に余裕を持つため」でしたが、やはり、少しでも豊かに生活するためや、将来への備えではないかと考えられます。
また、出産後も仕事を続ける女性が増え、「出産した後も現在の仕事を続ける」と回答した妻は、正規労働者で非正規労働者でも約8割が同一就業を継続しています。
意欲がある人もいると思いますが、せざるを得ない環境の方もいるのではないかと思われます。
それから、夫の協力も影響するようです。
「夫の平日の家事・育児時間」が長いほど、出産後の妻の同一就業継続の割合が高い傾向があります。
国が「イクメン」を推進している理由が分かります。
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やはり女性の活躍のためには、経済環境、社会の仕組みや家族の在り方も、もっと変えていかないと、世界に追いついていけないかもしれません。
志が高く優しい介護労働者・・ですが・・
今日は成人の日、3連休の最後の日の方も多いことでしょう。
それから関東では鏡開きの日で、お正月も終わります。
家庭円満を祈願し鏡餅をお雑煮やお汁粉で食べて、お正月気分を切り替える時期ですね。
今日は「介護労働者」について書いてみます。
国の経済・財政一体改革と並行して「介護離職者ゼロの実現」を進める検討をしていることはご存知だと思います。
「介護のための不本意な離職」を解消するため、介護休業制度を拡充等を行い、多様な民間介護サービスを拡大し、地域包括ケアシステムを実効性のあるものとし、また都市部を中心とする介護施設不足など、官民が協力して対応することになっています。
しかし、昨年度までの実績では、あまり計画通りには進んでいないようです。
その理由のひとつとして、介護人材の不足が挙げられています。
実際、介護に関わっている労働者は170万人と言われ、調査に表れない人まで推定すると400万人以上もいるのではないかとも言われています。しかし、大切なのは「良質な人材の確保」なのだそうです。
ここで、介護労働の概要を把握するために、
公益財団法人・介護労働安定センターの平成26年度(一部、平成25年度)の「介護労働実態調査」の結果をご紹介します。
まず、介護労働業界では、離職率が他の業界に比べて高く(16.5%)、その結果、採用率も高く(20.6%)なっています。離職者の約74%が勤務年数3年未満となっています。非常に労働力が流動しやすい職場だといえます。
その結果、介護サービスに従事している従業員の過不足感も、「大いに不足」、「不足」および「やや不足」を加えると59.3%となっており、実感として従業員が不足していると感じているようです。
では、労働力が流動してしてしまうのは、介護の仕事に満足感が得られないからなのでしょうか?
ところが、労働者が介護労働を選んだ理由は、「働きがいのある仕事だと思ったから」というのが、52.6%でトップでした。
また、「資格・技能が活かせるから」が36.2%、「今後もニーズが高まる仕事だから」が35.3%となっており、意欲や向上心を持った志のある人が参入しているように思われます。
また、「人や社会の役に立ちたいから」が32.0%、「お年寄りが好きだから」が25.6%となっており、ボランティア精神がある優しい人が多いように思われます。
仕事の満足度についても「仕事の内容・やりがい」があるという人が45.3%でトップでした。
つまり、仕事自体は満足している人は多いようなのです。
では、不満な点は一体何なのでしょうか?
「人手が足りない」が18.3%でトップでした。「人手が少ない」ので仕事がきつくなり、辞めてしまうことでまた「人手が少なく」なってしまう負のスパイラルなのでしょうか。
次に「仕事の内容の割に賃金が低い」が42.3%でした。確かにアンケート上の数字では、管理者に比べると介護労働者は、月給の実賃金で15万円ほど低いという結果になっています。
また「有給休暇が取りにくい」が34.9%ですが、シフト制で変形労働時間の職場が多いことから、実際なかなか取り難いことはあると思います。
その他にも「業務に対する社会的評価が低い」、「身体的負担が大きい」とか「労働時間が不規則、長い」なども不満な点として挙げられています。
確かに非常に厳しい仕事だと思います。
しかし、実際に前職の「介護の仕事を辞めた理由」は、
「職場の人間関係に問題があったため」が26.6%でトップでした。
労働時間が不規則で過酷であり、正規社員と非正規社員が混在し、女性労働者が約8割を占め、様々な前職と経験を持つ人達が集まっている職場で、人間関係を円滑に保つことは大変難しいことだと思います。
次いで「法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったため」が22.7%でした。これは、意識の高い労働者の多い介護業界に特徴的な介護理由だと思います。
「収入が少なかったため」も18.3%で上位でした。潜在的には非常に大きな理由ではないかと思います。
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せっかく志高く仕事に就く人が多い介護労働業界なのですから、この貴重な人材を活かして、育てて、辞めることが無いように、より良い環境の職場をつくっていくことは、「良質な人材確保」に繋がるひとつの方法だと思います。
ですから、労働者の意欲や向上心を活かして、頑張ればステップアップできるキャリアパスをつくり、
適正な評価・賃金制度を構築し、研修やOJTによって教育する機会をしっかり与え、
働き方(労働時間管理、休暇取得、変形労働時間活用など)を適正に行い、
職場内の人間関係に注意し、ハラスメント防止対策を確実に行うことで、
長く快適に働ける職場をつくっていくことで、「良質な人材」を確保していきましょう。(後日、もう少し詳しく書きます)
2016年度の社会保障関連予算案
今日から新年の「仕事始め」の方が多いと思います。
気持ちを切り替えて、エンジンかけて、とりあえずウォーミングアップしましょう。
それとも、いきなりトップギアでしょうか?
年の初めなので、国の予算案について書きます。
昨年末、12月24日に政府が2016年度予算案を閣議決定しました。
一般会計の総額が96兆7,218億円で、昨年より0.4%増えて、過去最大を更新したというニュースは耳にしていたと思います。
そのうち社会保障関係費は31兆9,738億円で、予算の3分の1も占めます。高齢者が増え、年金、医療や介護サービスの利用が増えているためです。
社会保障費は、昨年よりも4,412億円増えますが、
売れている医薬品等の価格の引き下げ、病院と連携した大型薬局の報酬減少、湿布薬の病院での処方の制限などで診療報酬等を抑制し、
さらに、協会けんぽの国庫負担の減額、子育て世代への給付金の廃止や、低所得者対策の福祉給付金を半減し、社会保障費の自然増部分を約1,700億円程度圧縮したと政府は述べています。
膨らみ続ける社会保障費は、なんとか抑えていかなければなりません。
現状のままでは、予算の3分の1を超える額を国債等による借金に頼り続け、2016年度末には国の債務残高は838兆円に達する予定です。
何とか、目先の負担軽減策や選挙対策にとらわれず、社会保障費を抑える根本的な施策を打ち出せないのでしょうか?
確かに、年金や医療費などを大幅に抑制することは、国民に大きな「痛み」を伴うような改革になってしまうと思います。
また、社会保障費を補う対策であった消費税増税10%に対する「軽減税率」導入、軍事費の5兆円を超える予算、それから低所得高齢者に3万円の「臨時給付金」を出すことなども、政治としてバランスをとるために必要なのかもしれません。(是非はわかりませんが)
しかし、将来の世代(若い人や子供達)に途方もない借金を残さないことも、非常に大切なことではないかと思います。
現行の「世代間扶養」の年金制度や、「現役の労働者に大きく依存」する医療保険制度や介護制度などは、若い世代で正社員として働ける人が大きく減少したことで、永続的に続くと考えられていた仕組みが崩れ始めています。
当面は、少子化を食い止めて、できるだけ現役で長くしっかり働ける人を増やしていくことが 、増え続ける社会保障費の抑制につながるのではないかと思います。
そのためにも日本経済の再生は欠かせません。
また、安倍政権の「希望出生率1.8」、現役労働者を減らさないためにも「介護離職ゼロ」は是非進めてほしいですし、「一億総活躍社会の実現」も、多くの様々な人が現役で長く働けるのであれば、社会保障費の増加を抑制できるのではないかと思います。(批判も多いようですが)
将来の世代に大きな負の遺産を残さないためにも、何とか・・・
社労士としての原点に
明けましておめでとうございます。
2016年が始まりました。
また新たな気持ちで、希望に溢れた未来に向けて、
社会保険労務士として、少しでも世の中のお役に立てるように行動していきたいと思います。
新年ですので、原点に戻ったテーマで書きます。
社会保険労務士法(昭和43年6月3日制定)という法律があります。
この法律の第1条に、社会保険労務士制度の目的があります。
「この法律は、社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もって労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする。」
ですから、社会保険労務士は、法令に則って適正に業務を遂行することで、事業主を支援し事業の成長に寄与することはもちろん、労働者等の労働環境をより良くしていくことも非常に大切な使命だと認識しています。
第1条の2には、社会保険労務士の責務が定められています。
「社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行われなければならない。」
「品位」というのは難しいですが、民法にある「信義則」の意味も含んでいて、
「人を信頼を裏切らず、不正なことことはしない行動をとり続ける姿勢」だと認識しています。
そして、社会保険労務士は「公正で誠実に業務に取り組まなければならない」と規定されています。
もちろんそれを支える「労働や社会保険に関する法令の知識のみならず、その実務の知識」についても精進して常に勉強し続けることが課せられているということだと思います。
どんな仕事でも同じだと思いますが、
「真面目に誠実に、人からの信頼を得られるように仕事に対して取り組む」ことを、
あらためて、肝に銘じたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
妊娠・出産・育児をしながら働く女性のための制度
2015年も残り少なくなりました。
もう休暇を取っている方もいるでしょうし、年末年始も関係なく、お忙しく働いている方もいらしゃると思います。
寒いですが、身体に気を付けて元気で頑張ってください。
今日は、前回のブログに続く内容です。
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今回のブログのテーマは、「妊娠・出産・育児をしながら働く女性を支援する制度」にしたいと思います。
ここでは、原則として継続して働いている女性労働に対して、法令で定められている制度について要点を列挙します。(それぞれの詳細については長い文章になるので省きます)
ですから、下記について会社が従業員に対して行うべき制度として、おそらく就業規則には記載されていると思います。
【職場生活での母性保護に関すること】
>時間外労働、休日労働、深夜業の制限、変形労働時間制の制限(労働基準法第66条)
妊娠している女性は、体調が不安定なことから、時間外労働、休日労働、深夜業および変形労働時間について免除を請求できることになっています。
>軽易業務への転換(労働基準法第65条)
妊娠中は、肉体的負担が大きい業務(例えば1日中売り場に立っている等)の場合は、他の軽易な業務への転換するよう会社に請求できます。
>危険有害業務の就業制限(労働基準法第64条)
一定以上の重量物の取り扱いや、生殖毒性等を有する有害物質が一定濃度以上に発散する場所等での業務については、妊娠、出産機能等に有害なので、妊娠の有無や年齢等によらず全ての女性を就労させることは禁止されています。
【産前・産後休業、育児休業に関すること】
>産前・産後休業(労働基準法第65条)
使用者は、6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産する予定の女性が請求したときや、産後8週間を経過しない女性を就業させてはいけないことになっています。
(特に、産後6週間は強制休業です。ただし、それ以降は本人が請求し、医師が支障なしと認めれば働けます)
パートやアルバイト等の女性も産前・産後休業を取得できます。
産前・産後休業中の賃金については労働基準法では会社に義務付けていませんが、健康保険の被保険者であれば出産日以前42日から出産日後56日まで「出産手当金」が支給されることが定められています。
「出産手当金」は標準報酬月額の3分の2に相当する額になりますが、
会社から給与の全部か一部が支払われているときは支給されません。しかし給与で支払われた額が「出産手当金」より少ない場合は、その差額が支給されます。
>産前・産後休業中の社会保険料(健康保険、厚生年金、介護保険)の免除
(平成24年8月公的年金制度の財政基盤および最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律)
会社が全国健康保険組合や健康保険組合に申し出れば、女性従業員だけでなく会社も免除されます。
>解雇制限(労働基準法19条)
産前・産後休業の期間及びその後30日間の解雇は禁止です。
>出産育児一時金(健康保険法101条)
健康保険の被保険者が出産した場合は、一児の出産につき原則42万円が支給されます。(双子なら84万円)
母体保護が目的なので、妊娠85日以上であれば、死産、流産、人口妊娠中絶でも支給され、また父不明の婚外子出産についても支給されます。
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>育児休業(育児・介護休業法第5条~第9条)
従業員が会社に申し出れば、子が1歳になるまで(またパパが育児休業を取得する場合は、子が1歳2カ月になるまでの1年間)の間、育児休業を取ることができます。
もし1歳になっても待機児童で保育所が決まってなかったり、万が一、1歳になる前にママが亡くなってしまった場合などは、申出によって1歳6カ月になるまで育児休業をとることもできます。
育児休業中は、有給かどうかは会社によって異なりますが、雇用保険の一般被保険者で被保険者期間等の要件や一定の手続きを充たせば「育児休業給付金」が給付されます。
「育児休業給付金」は1歳未満の子の育児休業を取得した等の一定要件を満たした場合、原則として休業開始時の賃金月額の67%が支給されることになっており、6カ月経過後は50%になります。
>育児休業中の社会保険料(健康保険、厚生年金、介護保険)の免除(健康保険法159条)
会社が全国健康保険組合や健康保険組合に申し出れば、従業員も会社も免除されます。
育児休業は正社員だけでなく、パートやアルバイト等でも取得できますし、
契約期間が決まっていても、1年以上同じ会社で継続雇用されていて、子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる場合は、育児休業は取得できます。
【産後休業後の復職に関すること】
>時間外労働、休日労働、深夜業の制限、変形労働時間制の制限(労働基準法第64条)
>危険有害業務の就業制限(労働基準法第66条)
産後1年を経過しない女性には、妊娠している女性と同様に、上記労働制限が適用されます。
>育児時間(労働基準法第67条)
生後1年に達しない子を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分間の育児時間を会社に請求することができます。
>母性健康管理措置(男女雇用機会均等法第12条、第13条)
産後1年を経過しない女性は、医師等から指示があったときは、健康診査に必要な時間の確保を、会社に申し出ることができます。
また、指導を受けた場合には、必要な措置を受ける時間も確保することができます。
【子が1歳になった後も利用可能な制度】
>短時間勤務制度(育児・介護休業法第23条)
会社は、一定の条件を満たす3歳未満の子を養育する男女の従業員について、短時間勤務制度(1日原則として6時間)を設けなければならないことになっています。
>所定労働時間の制限(育児・介護休業法第16条)
会社は、一定の条件をを満たす3歳未満の子を養育する男女の従業員から請求があった場合は、所定外労働をさせてはならないことになっています。
>子の看護休暇(育児・介護休業法第16条)
小学校入学前の子を養育する従業員は、会社に申し出ることにより、
年次有給休暇とは別に、子が1人なら1年につき5日まで、子が2人以上なら10日まで、病気やケガをした子の看護、予防接種及び健康診断のために休暇を取得することができます。
ただし、有給か無給かは会社の定めによります。
>時間外労働、深夜業の制限(育児・介護休業法第17条)
小学校入学前の子を養育する一定の従業員から、会社に請求があった場合は、
1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはならないことになっています。また深夜(午後10時から午前5時まで)において労働させてはならないことになっています。
このように、働く女性が、赤ちゃんを産んだり育てたりする負担を軽減させて働きやすい環境をつくるように、いくつもの制度が法律で定められています。
しかし、このような法律や制度をご存知でない方もいらっしゃると思いますので、より良い労働環境に向けてご参考にしていただければと思います。